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5話――3月23日




「それにしても、奇跡のような事件だったわ」


祈里は感心するように呟いた。病床の彼女の少し荒い声は、静かな病院のなかでとても目立つ。


「普通、死んでも可笑しくない……というかもう少し遅かったら死んでいたらしいわよ、あたしたち。弥乃が咄嗟に、通報してくれなかったらどうなってたことか」


「うん。本当によかった」


二人は程度に差があれど、共に体のどこかに包帯を巻いていた。


「本当に助かったわ。ありがとうね、弥乃」


「そんな、むしろ私は謝らないといけないよ。だって、私があの森に誘ったからこんな目に……」


「しょうがないわよ、長介がいなくなったんだから。私だって探したくなるわ」


「で、でも……」


「それに、あたしたちを落としたのは長介君の友達。長介君が事故で崖に落ちて、その後に運悪く私たちが来たから、動揺したその子は犯人扱いされると思って落としただけ。弥乃はどこも悪くないじゃない」


「そうだけど……」


「弥乃は人に頼む事が苦手過ぎよ。だからこそ、ヘンに皆から慕われているんだけどね。……あたしが言うのもなんだけど」


 弥乃は少し困惑した。


 あの時、110番に電話をかけた事を思い出す。


あの時、危機感というものはなかった。どうしてもかけなければ死んでしまう、と焦っていた訳ではない。


夢の中にいた。


夢の中で、その日あった、悪夢に苛まれた。


地を踏むことさえ悪意のある邪悪に思えるほどの悪夢。辺りは真っ暗で、うす気味が悪かった。


弥乃には、やはり、自分が褒められるような行為をしたように思えなかった。もっと超越的な、何らかの奇跡の力で、心やさしい祈里が助かったのだと思った。


 そんな中、祈里は。


(普段から真面目な弥乃を見て、神様が助けてくれたんでしょう。それくらいに、弥乃は魅力的なんだから)


 そんな事を思うのである。


もう悪魔はいない。


また悪魔が現れる時、奇跡の力はないかもしれないが、その時は弥乃の力で、対処するべきだ。


ただ、自分の力ではどうにもならない問題は、多分、誰かと一緒に解決するのだろう。弥乃と言うキャラクターは、誰よりそれが可能なのだから。

Y・Tさん、改めておめでとうございます。


皆さんが盛大に祝った後でしょうが、私からも輝かしく、めでたいこの日に(こっそり)参加させていただきます。陽のあたるところは苦手なのです。いつかは参加したいですが。


言いたい事は、いろいろあってうまくマトマりませんが、ただ一つ言えるのは、貴方はうらやましい。いつも誰かを思い、誰かに思われるY・Tさん。輝きすぎて、貴方はピッカピカです。


また、いつまでも、貴方の魅力のとりことなっていればいいなぁ。そんな事を、私は思います。


ではまた!

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