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4話
弥乃は人を疑わない性分らしい。無差別に人懐っこいというもの、実際は考えものではあ。しかし持ち前の小動物のような、癒し系な容姿は、彼女を嫌おうとか、憎もうとする邪さえも心地のよいものに変換する。
しかし。世の中は簡単じゃない。
例えどれ程に彼女がチャーミーであろうとも、それで楽な思いばかりできるとは限らない。
例えば、心さえ美しい峰不二子がウィンクしたとする。身も心も美しい峰不二子だ。誰だって心奪われるだろう。だが、こちらに向かってくる車に、そのウィンクが通じるだろうか。
通じない。どんな魅力的な人物だって、無機質なものを殺せない。
そう。
弥乃が直面していた問題と言うのは、もっと無機質で、そして平常な精神の人間とは無縁だった。心のない、彼女の魅力さえわかろうとしない、わかりっこない悪魔が原因だったのだ。
「 」
弥乃の鞄に着いていた、カエルの形をしたバックが安心したような顔をした。弥乃を、有るべき、幸せな場所へと導き終えたのだ。
その、凛々しいカエルも。
弥乃の魅力を知っていた、紳士に違いない。