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「え、何それ。厄介事押し付けに来ました、って言ってるよね?」
ベッドの上で少し身を乗り出したバスクに、彼は変わらぬテンションで切り返す。
「わかっているなら、早く用意をしろ。阿呆」
その言葉に敬礼のポーズをすぐさま取る。
「了解しましたーあぁ、今回は二週間かー。思ってたより短いことを考えると、相当面倒な事なんだろうなぁ…」
「五月蠅い。黙って着替えろ」
「ローグも一緒に行く?」
「黙れ、阿呆」
「はーい…」
愚痴りながら、牢屋前に置かれたいつもの服を拾い上げて着替え始める。このやり取りもいつものことだ。
囚人用のボロ服から普段着ている耐火服へ着替えたバスクは、文官風の男ローグと共に地下階段を上がって本塔への通路を歩いていく。すれ違う文官たちは例外無く、殺気に満ちた視線をくれる。いつものことだと言わんばかりに、ニコニコしながらすれ違うバスクを見ながら、ローグは呟いた。
「…阿呆」
バスクの頭を軽く小突いたローグは、その手で首の後ろのフードを被せた。されるがままにフードを被ったバスクは、二〇ほどの身長差があるローグを上目遣いで覗き込む。
「エッチ」
「―殺すぞ」
「わーお、マジギレだぁ」
「……」
押し黙ったローグが足早になったので、そのまま少し後ろを歩くことにする。これ以上は不味い。大変不味い。一見、文官に見えるローグだが、実際は正式な騎士、軍人である。素手で殴り合えば一方的にやられるのは明白なのだ。―気が付けば本塔の大扉が目の前にあった。ローグの怒りを買ったことについて思案しているうちに、かなりの時間が経ったようである。
「行くぞ、陛下が御待ちだ」
足早に先を行く彼の背中を駆け足で追い掛けながら、バスクは機嫌の直し方と、思い当たる厄介事の二件について再び思考を巡らせた。
「両名、面を上げよ。」
年老いた文官長、大司祭の呼びかけにバスク、ローグの二人は顔を上げる。正面には玉座に