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6

 真っ赤な超高温の熱線が、鋭く響きながら、前方の林の中へと吸い込まれていく。

――キイィィィィン……

熱線の通り過ぎた場所は、濃い灰色の煙を上げる焦土と化していた。林の木々は熱線で切断され、倒れ、燃えて、その範囲を広げていく。

(―そろそろだ)

ブラッドは林の奥にある、例の巨大な物体に向け撃ち出した熱線が、接触予想時間になるのを間近にして、バスクに注意を促そうとした。

 ―バスク。気を付…

 言い終わらぬうちに、昼間の明るさを物ともしないほどの閃光が辺りを包む。少し遅れて爆音と、それに伴う爆熱、衝撃波が林から数百メートル離れたバスクを襲う。

――視界は土煙で何も見えない。ブラッドが何か言おうとする直前、バスクは危険を感じて、練り上げた残りの魔力を防御結界の展開へと回していた。そのおかげで林を中心とした爆心地の中にいながら、無傷である。竜装を展開しているとはいえ、「赤尾」は単純な物理防御力は兵装がある下半身だけで、結界が間に合っていなければ彼の上半身は消し飛ぶか、良くて丸焦げだったに違いない。

「…死ぬ所だった」

心底思った言葉が口から出てしまった。

―っ、すまない…

震える声で心からの謝罪を言葉にして、ブラッドは黙り込んだ。―なんでもないよ、と言わんばかりにおちょくってやろうと思ったが、奇跡的に生きているこの状況は正直、笑えなかった。

――しばらくして土煙が晴れだすと、半壊した国境砦の向こうから多くの騎兵が、大きな土煙を作りながら向かってくるのが見えた。―これは駄目だろうな。と思いながら、牢屋での過ごし方を考え始めたバスクだった。


――ピチョン…ピチョン…

暗い空間に、水の音が静かに響く。アリスト王城の分塔、地下にある投獄牢の一部屋。汚いベッドに横たわり、調子良く鼻歌を歌うバスクの姿があった。

「フーフフン、フッフー…」

「―音痴だという自覚はあるか?」

足音を立てずにバスクの居る牢屋前に現れた、眼鏡をかけた文官風の男は開口一番、嫌味を言う。

「―あるよ。だからわざわざ恥を忍んで出迎えたんだ」

「黙れ、阿呆。―的外れな嫌がらせをするぐらい元気なら、問題は無さそうだな」


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