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そこから連鎖的に爆発が続き、キメラの身体を爆炎が包んでいく。
―ドドドドドドドド…
「なんだ、何が起きている?」
土煙の中を走るユラントフは、アルターノに現状の報告を求める。
(―彼が仕上げに掛かったみたい。このまま爆発が続くと…)
そう言いながら結論に至ったアルターノは、急いで主に告げる。
―感覚共有を!
反射的にユラントフは感覚共有を許可、青い魔力が全身を走る。同時に周囲を囲む結界にも青い脈動が走り、その強度を跳ね上げる。
連続的に起きていた爆発はその範囲を広げていき、ついにはドームそのものを崩すに至っている。崩れ始めた内壁は音を立てて剥がれ落ちていく。乱雑に落ちる岩石は、ユラントフをすぐに飲み込んでいった。
――崩れた洞窟、ドーム状だったはずのその場所は空に抜ける大穴が広がり、ただの巨大な落とし穴になっていた。空からは小雨が降り始めている。その水が宙に舞う土煙を吸い取っているようにも見えた。
地面を覆う瓦礫の山。そこに倒れ込む巨躯は両腕が弾け飛んでいて、残る身体は黒く焼け焦げている。その上に立つ人影―バスクは感覚共有のみを解き、小雨にうたれていた。
「―まだ生きてるのか。止め刺すには魔力、足りないかな…」
足元のキメラはまだ息がある。そもそもの依頼内容はキメラの捕獲。殺す必要は無いはずだった。
―さっさと片付けろ。あっちもまだ居るんだからな
ガラガラ、という岩山が崩れる音と共に、青い結界に守られたユラントフが姿を現した。バスクの左前一〇メートルほどである。
「いやぁ、無事だったみたいっすね」
軽く笑って言葉を投げかけるバスクに、ユラントフからの返答は無い。
「…テンション上がっちゃって、少しやり過ぎたかな?」
笑いながら尾を振るバスクに悪びれた様子は無い。もちろん、この対応は怒りを買うことを想定してのものだ。だが、ユラントフは無言で結界を解き、わずかに俯いたままだ。
「…えぇっとぉ…」
あまりの反応の無さに気味が悪くなった。もう一声かけるか悩んだバスクが気付いた時には、すでに攻撃は始まっていた。空から降る小雨は、鋭く尖った矢のようにバスク目掛けて降り注ぐ。
―竜装「雹翼」範囲攻撃術弐型 ヴェインレイン
高速で降り注ぐ氷の矢はキメラもろともバスクを撃ち抜いていく。鋭利な矢は積み上がった




