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キを掛けるべく、手に持っていた剣を壁へと突き立てる。そのまま土煙を上げながら落下速度を徐々に落として行く。
(どうにか止まりそうかな…)
右手に持ったブレーキのおかげで地面に激突するのは免れた、と思った矢先。―ガキィイインッ…。硬い岩に剣が引っ掛かり、バスクは反動で宙へと投げ出される。
「……おろ?」
天地が入れ替わり、見上げたはずの空が地面だと気付いた時には、空洞の底まであと四メートルも残っていなかった。
―バスク!
ブラッドの呼び掛けの意味は分かっていたが、間に合わない。仕方が無いので自分でどうにかしようと覚悟を決める。
「あらよっと―」
飛び込む形で地面に激突。したかと思った瞬間、バスクの身体は再び宙を舞っていた。両手を着き、ほぼ真横へと飛んだ後、殺しきれなかった勢いで地面を転がる。降りて来た反対側の壁近くまで転がったバスクは、もう一度地面から跳ね上がり今度は両足で着地する。
「ほいっと」
片膝を着いて安堵の溜息を漏らしたバスクの前には、すべてを傍観していたユラントフの姿があった。服の汚れを手で払いながら立ち上がる。
「―手助けなしとは、ずいぶん酷くないっすか?」
「流石ですね。あの高さから落ちた時は駄目かと思いましたよ」
笑顔で答えるその言葉には、嫌味は無いように感じられた。
「さあ、この先にキメラは居るはずです。準備良ければ、進んで下さいね」
あっ、と思い出したように人差し指を立て言葉を続ける。
「…私はそろそろお暇します。時間切れのようなので。キメラ退治頑張って下さい」
そう言うと、ユラントフの身体から青色の魔力が霧散した。
「―失礼しました、怪我等あれば手当します」
「…いや、大丈夫です」
空洞から横に伸びる穴へと歩き出す。この先にキメラがいる。横穴から溢れだす魔力はキメラ1体のものなのか、それ以上のものなのかは現時点ではまだ、分からなかった。
「ブラッド。感覚共有、竜装展開だ」
―分かった。速攻で決めるぞ
ペンダントから流れ出す赤い魔力は、バスクの全身へと流れ込んでいく。魔力の発光が治まった頃には横穴を抜ける一歩手前まで来ていた。感覚共有を始めたバスクの瞳には赤い光が宿




