72 【自習期間】
そんな生活を送ること8ヶ月、悩みに悩んだ卒業研究も無事に終えた悠依は、卒業式前の1ヶ月となり、自主学習の期間に入っていた。
この日、特に予定のなかった悠依は遥季の家ですっかりくつろいでいた。
「もう終わりだね~……」
「そうだな」
「遥季、結局陽翔さんのところに決まったの?」
「ああ、兄貴の弟子みたいな感じだけど。学園長が許してくれたんだ!」
「そっか、よかったね!」
「悠依は黎羽様のところだっけ?」
「うん、巫女として置いてもらえることになったの!」
「そっか、じゃあ天曳か?」
「あっ、いや、違くて、黎羽様が社を移してくれるみたいなの。簡単に言うと蓮華さんと、黎羽様が場所を入れ替えるみたいな……?」
「へぇ? じゃあまだ星劉にいるんだな!」
「うん!」
「また鍋食べようぜ!」
「食べよー! 遊べるしね!」
「やっぱり近いと楽だよな! いろいろと!」
遥季は笑顔を浮かべた。
空のように澄みわたる遥季の笑顔に、つられて悠依も笑顔になった。
「何笑ってんだよ」
「笑ってないよ!」
「嘘つけ!」
「嘘じゃないよ~!」
この日だけではなく、悠依は自習期間を主に遥季とともに過ごした。
冬から春に移り変わりつつある季節の中、悠依は遥季と過ごす残り少ない時間を堪能していた。




