60 【対面】
「コチラデゴザイマス」
柳木の先導で内装は外から見るのとはまた違った雰囲気だった。
外装が洋風だったこともありてっきり内装も洋風だと思い込んでいた悠依は思わず瞬きをした。
(内装は案外シンプル……というか何もものがない?)
「後ろのお方、どうかなさいましたか?」
後ろのお方、とは悠依のことだ。キョロキョロしすぎて少し遅れていた悠依は柳木の後ろを歩いていた空木に不審観を持たれたようだった。
「い、いえ! すみません! 何でもありません!」
「――物が少ないと思われましたか?」
「えっ! いや、そんなことは……!」
「きっと外観とのギャップに驚かれたのでしょう。黒と白を基調としたインテリアを、との旦那様の御意向なのです」
「そうなんですか……」
迷子になってしまいそうなほど長い廊下を歩き続けたどり着いた1つの大きな扉。その扉の前に柳木と空木が立ち止まった。
「ミナサマ、コチラニナリマス」
「旦那様をお呼びいたしますので、少々お待ちください」
5分後、大きな扉が両方とも開いた。
「旦那様をお連れしました」
そう言った空木の向こう、長身の凛とした男性が立っていた。
「いやいや、遅れて申し訳ない。空木から聞きました、それで何の御用でしょうか?」
凛として気が強そうな顔からは想像もできないほど優しい声だった。
「私は星劉学園の現校長、十六夜と申します。貴方の二つ後にあたります。3千年前のことを教えていただきたいのですが……」
3千年前という言葉にその男性は顔色を変えた。
「申し訳ないが、十六夜さん。見ず知らずのよくわからない人に話せる内容ではないんだ」
「承知の上です。しかし、その反応。3千年前、何が起こったのかを知っているんですね?」
1歩も引かない学園長の対応にその男性は目を丸くした。
「――そんなに知りたいのですか? ……変わった人もいたものですね。いいでしょう、空木、柳木、この方達をあの部屋へ」
「よろしいのですか……?」
「ああ、もうよい。"あいつ”の罪を、もう終わらせてやらなければいけない……」




