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5 【悪魔ノ呼ビ出シ】

 悠依は玄関に向かうため階段を下っていた。すると突然後ろから誰かに抱きつかれたのだ。


「いきなりなに? びっくりするでしょ、遥季!」

「悪かったよ。ほら帰ろうぜ」

「うん!」


 そうして玄関のある一階に着いたとき、「悠依ちゃん……だよね?」と話しかけられた。


(え? 誰?)


悠依が振り向くとそこにいたのは悠依の1つ上の先輩、久遠くおん伊織いおりだった。


「あってますけど……? なんですか?」

「ちょっと悠依ちゃんと話したいことがあってね」

「話したいこと、ですか?」

「そう! なんだけど……今時間大丈夫?」


 伊織は悠依の後ろで話を聞いていた遥季を一瞥した。

 すると遥季はハッとした顔をし「俺外でうろうろしてるから話し終わったら連絡して?」と去っていった。


「ここじゃなんだから場所を変えようか!」


 伊織が悠依をつれてきたのは滅多に利用する人がいない裏階段だった。


「それで……伊織先輩。話とは何でしょう?」

「そうね。まず、悠依ちゃん。遥季くんのこと好き?」

「え!?」


 悠依の顔は一気に赤くなった。


「そう。やっぱり好きなのね?」

「い、いえ! 好きというか……!」

「良いのよ、隠さなくて。好きになるのは良いことだし。ただ――」

「ただ?」

「ただ、遥季くんから距離を置いてほしいの」

「何でですか?」

「悠依ちゃん、私の持っている力って何かわかってる?」

「はい、吸血鬼ヴァンパイアですよね?」


 悠依は察しがついた。


(いや、まさか。そんなことするわけ……)


「……遥季の血を吸う気ですか?」

「当たりー。陰陽の力を持つ人の血って美味しいのよ? だから、距離置いてくれない?」


 悠依は愕然とした。

 学園内での能力開放及び能力を使用しての攻撃、喧嘩などはもちろん学園外でも禁止されており、その中には“吸血行為”も含まれていたのだ。


「――いやです」

「いや? どうして?」

「なんでって規則違反ですよ! それに、遥季のこと守りたいですし」

「そっかーじゃあ、悠依ちゃんでもいいかな。巫女の血も美味しいらしいし、ね?」


 一気に悠依との間を詰め、胸元をはだけさせ、壁に押し付けながら、首筋に牙を突き立てた。


「痛っ!! やめ……!!」


 悠依は必死に抵抗するが、後ろは壁、前は伊織に挟まれ逃げ場はなかった。誰もいない階段に血を吸う音だけが響く。


――数分後。


 悠依は力が抜け、階段に座り込んでしまっていた。そんな状態になっても伊織はまだ悠依の血を吸い続けている。


「も……やめ……て」

「はぁ。今日はこれくらいにしとくわ。これは警告だよ? 悠依ちゃんの血、美味しかった。それじゃあね」


 伊織はすっかり暗くなった学園の闇に消えていったのだった。

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