55 【クリスマス】
あの告白から2週間、陽翔は黎羽に呼び出されていた。
「あの、黎羽様。何か……?」
「おぬし、悠依に言ったのか?」
「――いえ、まだ」
「早く言ったほうがいい。ただでさえおぬしの命は限られているのだ。その体が動くうちに、言葉を発することが出来るうちに、伝えておいた方がいい」
黎羽は祈るような表情で陽翔の手を握り、そして離れた。
「まあ言うか言わないかはおぬし次第だ。藜も私もおぬしの味方だ」
「ありがとうございます……」
一方そのころ悠依と遥季はとあるカフェで陽翔を待っていた。
「遅いなぁ兄貴は」
「――本当に尊敬するよ」
「は?」
「犬榧のカモフラージュ力。遥季にしか見えないもん」
「そりゃ本人だからだろ?」
「そうじゃなくて、口調とかも!」
「あぁ、ひたすら陽翔にしごかれたからな」
遥季は懐かしむように視線を動かした。
「あ、兄貴!」
「遅れてごめんね?」
「大丈夫ですよ!」
「ったく遅せえよ!」
「ごめんごめん」
陽翔は眉を下げ謝る。
「全然大丈夫ですよ! 遥季の言うことなんて気にしないでください」
「なっ! 悠依、お前なー!」
「なによ、陽翔さんだって用事があったんだから仕方ないでしょ!?」
そんな2人の会話に陽翔はクスクスと笑っていた。
「何笑ってるんですか!」
「いや、仲良いなって思ってね」
「もう! 早く買い物いきましょ! 今日はクリスマスですよ! 今日は私が作ります」
「まじか!」
「ありがとう、悠依ちゃん。僕も手伝うよ」
「ありがとうございます! ケーキは作ろうと思ってるんですが、ほかに何か食べたいものはありますか?」
「唐揚げとチャーハン!」
爛々と目を輝かせている陽翔に悠依はついクスッと笑ってしまう。
「わかりました!」
「じゃあ行くか!」




