53 【決意】
「陽翔さん……! 大丈夫ですか? すみません……」
「気にしないで? これ考えたの僕だから」
「えっ?」
(これ、ってこの状況のこと?)悠依の頭はとっくに容量オーバーしていた。
「えっ、と。とりあえず、どういうことですか?」
「犬榧からどこまで聞いたの?」
「えっと、遥季が実は犬榧で、本当の遥季は当の昔に亡くなっている。ってところまでしか追いついてないです」
陽翔は混乱している悠依に思わず吹き出し、「そうだよね~、突然だもんね」と言って続けた。
「そのあとに、学園が絡んでるって言われなかった?」
「あぁ~……」
「おい悠依。俺の話聞いてなかったのかよ」
「違うの! 犬榧の話は聞いてたけど、突然すぎて……!」
「仕方ないだろ? 今まで、というかついさっきまで、悠依ちゃんはお前のことを遥季だと思ってたんだから。そんな突然実は違いました~とか言われても信じれるわけないだろ?」
「――ちっ」
犬榧と陽翔との会話を聞いた悠依は改めて”今目の前にいるこの人は遥季なんだ”と感じていた。実際、犬榧に俺が遥季だ、と伝えられたところで信じるのは無理な話だ。今の今まで宿敵と言われ、倒すべき相手だったはずの相手に突然訳のわからないことを言われ、"ああそうですか”とすんなり聞く馬鹿がどこにいるだろうか。
「それでね、悠依ちゃん。今日は犬榧のことを教えたかったのと、もう1つ! こっちは悠依ちゃんがよければなんだけど……」
「なんですか?」
「学園に……というか前々学園長に”復讐”しに行かないかと思って♪」
「復讐!? って、本気ですか? というか、生きてるんですか?」
「ん? 本気だよ?」
「生きてるに決まってんだろ、前々学園長の専門は魔法。しかも、"不老不死”の専門だ」
「不老不死……。でもおかしいよ!」
「何がおかしいの?」
「専門が魔法ならどうやってお父さんを殺したの?」
「あいつは専門が魔法ってだけで、剣術と体術も師範レベルだったんだ。――あいつは、幽羽を……嬲り殺しにしたんだ……」
「っ!!」
悠依は声も出せなかった。
(お父さんの最期が殺されただけでなく嬲り殺しだった……)
悠依の瞳からは大粒の涙が零れ、無意識のうちに答えていた。
「――……ます」
「え?」
「行きます。前々学園長のところへ、私がそいつの息の根を止めます」




