表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2代目天狐と鬼天狗  作者: 涼井 菜千
新たな問題
45/76

44 【逆転】

「いや~すごかったよ、悠依ちゃんの舞。架威もあんなに踊れるとはね」

「あ、ありがとうございます、陽翔さん!」

 

 目立った失敗もなくステージ発表を終えることが出来た悠依と架威の2人は陽翔とともに次の遥季の発表を待っていた。


 陽翔はふと、不思議そうな顔をすると、

「そういえば遥季って何の役なの?」

 と2人に聞いてきた。


「えっと……」


 考え出した2人は自分達も遥季の役を知らないということに気が付いた。薙癒は物語の中心人物の姫様役と聞いた。しかし遥季は何度聞いても「教えない。てか見に来なくていい」の一点張りだった。


「私もわかんないんです……。遥季、何回聞いても教えてくれなくて」

「えっ! 悠依ちゃんにも教えてないの?」

「はい……」


 悠依が俯きしょんぼりしていると、突然架威が

「教えてやろうか?」

 と言ってきた。


「「えっ!?」」


 悠依と陽翔は声をそろえて驚いた。


「知ってるの? 架威」

「ああ、遥季のことならたいていわかる。出てきたら教えてやるよ」

「ありがとう!」


数分後――


 映画館のようなブザーが鳴り発表が始まった。そして開始から何分も経たないうちに架威が指を指し言った。


「遥季、あれだぞ」

「え?」


 悠依が指の方向に目をやるとそこにいたのは美しい姫だった。


 悠依は小声で、

「ちょっと架威。薙癒じゃなくて遥季の役が知りたいの!」

 と少し強い口調で言った。

 しかし架威は

「だからあれだって」

 と変わらずに姫を指差し続ける。


 いよいよ悠依が苛々しはじめたとき、隣にいた陽翔が“ああ~”と何かに納得したような声を上げた。


「悠依ちゃん。あれ女の子に見えるけど確かに遥季だよ」

「えっ!?」


 驚き呆然とする悠依を横目に架威と陽翔は話し続ける。


「だから言ったろ、あれだって。さっきの女装と男装のペアのやつと一緒だよ。薙癒が王子の方をやりたいって言ったんだと。んで、王子役だった遥季が姫役をやることになったんだとよ」

「へぇ? 薙癒は男装癖があったの?」

「いや、別にそんなことは。今回で目覚めた、って感じですかね」

「なるほど」


 我に返った悠依は疑問をぶつけた。


「でもなんで声まで変わってるの? それに身長も、骨格も違う気がする……」

「簡単なことだよ。大方、魔術でも使っているんだろう。でも……」


 そこまで言うと陽翔は目を細めステージを見て、

「――ちょっと雑かな?」

 と言った。


「そうなんですか……」


 

 この日、悠依は初めて陽翔の本性を垣間見ることが出来たような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ