42 【仮装】
悠依達が着いたころには既に体育館の盛り上がりは最高潮になっていた。
ムシムシとした暑さに思わず2人は顔をしかめる。悠依は小道具の扇子をパタパタと扇いだ。
「すごい熱気……!」
「まだ時間あるもんな、今って何の時間だ?」
この星劉祭には様々な企画が出されている。中庭では街の人による模擬店、学園前では祭りを思わせる出店、そしてここ体育館ではクラスの発表が始まるまで“女&男ペアコンテスト”と“バンド演奏”が行われる。
今は“男女のペアコンテスト”が行われているようだった。
悠依はステージに見知った顔を見つけた。
「ん……?」
「どうした?」
「いや、なんか架威と薙癒が出てる気がするんだけど……」
「あれ? 言ってなかったか? 薙癒が出たいって架威を無理矢理連れてったんだ」
「へぇ~。何か意外だね。架威そういうの嫌そうなのに……」
ステージをマジマジと見つめ、ハッとした顔をした。
「ねぇ、もしかしてこれって……」
「あ?」
「――架威が女?」
「あぁ、そりゃ女装と男装のペアコンテストだからな」
「えぇ!?」
悠依が驚くのも無理はなかった。
ステージ上にいるのは明るい印象を受ける男子とどこか気だるげでミステリアスな印象を受ける女子の2人。
どこをどう見ても悠依の知る2人はいなかった。
「嘘……」
「本当、化けたよな」
「化けたっていうか、もう別人だよ……」
悠依が呆然としている間に架威たちはステージ上から姿を消していた。
「あれ……?」
「何キョロキョロしてんだよ」
突然背後から掛けられた言葉に悠依は驚いて振り返った。
「架威! ってその格好……」
架威の格好は先程つけていたウィッグをとっただけで服装は女子のままだった。
「なんだよ、何か問題でもあるのか?」
「い、いや。問題っていうか……い、違和感かな?」
「いいじゃないの、可愛いんだから!」
「薙癒!」
「やっほ~」
「薙癒もその格好なんだ……」
「似合うでしょ?」
「似合うけど、違和感が……」
「ほらお前ら、そろそろ時間だろ? 用意しろよ」
「あ! そうだね、行こう! 架威」




