40 【初夏】
連休から1カ月、悠依は特に変わったこともなく毎日を過ごしていた。
「……なぁ悠依、聞いてんの?」
そう今は休み時間。遥季は付き合ったことをきっかけに毎時間悠依のクラスに来るようになった。
「え? あ、ごめん聞いてなかった。何?」
遥季は半分呆れた顔をした。
「だから、学祭! 一緒にまわんね?」
学祭、正式には星劉祭という俗に言う文化祭で、毎年夏休み前の7月中旬に行われる学園のメインイベントの1つである。
「あ、そっか。学祭ね!」
「そうだよ! 悠依のクラスは何やんの?」
「んー、まだ決まってないと思う。遥季のクラスは?」
「俺のクラスは洋風の衣装で喫茶店って言ってた。あとステージは何でもありの寸劇、バトルものだと」
悠依は自分のクラスの様子を思い出していた。
「喫茶と劇かぁ。うちのクラスも何か食べたり飲んだり出来るやつがやりたいって人が多いんだよね、あとお化け屋敷かな。」
「それってお化けの格好をして何か飲食店やればいいんじゃね?」
悠依は目を丸くした。
「そっか! それだよ遥季。ありがと! 今日提案してみるね!」
「おう! ステージは何すんの?」
遥季の言葉に悠依の顔が曇る。
「あー……それがね」
悠依の目が泳いだのを遥季は見逃さなかった。
「どんな?」
悠依は困ったような呆れたような顔をした。
「……和をイメージしたパフォーマンス。巫女が主役なんだって」
「和?」
「そう。架威も出るよ? 私は巫女装束をアレンジして5種類の巫女舞を、架威は新撰組の隊服をアレンジして剣舞を踊るの。他のみんなは演奏と裏方だって」
「ふーん……演奏って、尺八か?」
「その案も出たんだけど、あと1ヶ月でそれは無理だろって」
「確かにな。じゃあどうするんだ? 三味線とかか?」
「三味線と琴は弾ける人いたから、あと鼓とかは練習するんだって」
「大変そうだな……」
「そっちもでしょ? 魔法とか何でもありって、生徒会の許可下りたの?」
遥季は頷きながら答えた。
「それが大丈夫だったんだよ」
そして俺もびっくりしたんだけど、と付け加えた。




