39 【帰還】
長かった4泊5日の天曳旅行を終え星劉へと帰ってきた悠依は、家に着いた途端ベッドにダイブした。
そして次の日、悠依は遥季の家で勉強会をした。勉強会といっても遥季の残った課題を片付けるのが目的である。
「なんで行く前にやっとかなかったの?」
遥季はスラスラと解きながら、悠依の方を見ようとしない。
「俺は直前にやるタイプなんだよ」
邪魔をしないように悠依は連休明けのテストに向けて勉強をし始めた。
――数時間後――
遥季は机に突っ伏した。
「やっと終わった……」
ふと悠依の方に目をやると机に体を預け、気持ちよさそうに眠っていた。
遥季は寝息を立てる悠依の頭を静かに撫でた。
「最後の日だっていうのに、全然構ってやれなかったな」
「ん……」
「悠依? 起きたのか?」
悠依は目を擦りながら頷いた。
「課題終わったの?」
「終わったよ」
「……今何時?」
遥季は壁にかかった時計を見ながら応えた。
「今? 5時15分だけど」
「5時か。今日、陽翔さんは?」
「兄貴は今日早いはずだ。6時くらいとか言ってたけど、おそらく6時30分くらいになるだろうな」
悠依は少し考え込むとうん、と何かを決意したような顔をした。
「じゃあ今日は私が晩御飯作ろうかな?」
「マジ!?」
「うん。何か食べたいのある?」
「悠依の得意なものが食いたい」
遥季は考え込んだ末にそう応えた。きっと特に何も浮かばなかったのだろう。
そして悠依は唐揚げ、ピザ、チャーハン、そしてケーキ、という何とも統一感のない料理を作った。
というのも、遥季はピザ、陽翔はチャーハンと唐揚げ、が好きなのだ。2人の好きな食べ物を作ったらこうなってしまった、というわけである。
悠依がケーキを冷蔵庫にいれたとき、ちょうど陽翔が帰ってきた。
「ただいま~。ん? 何か美味しそうな香りがするね?」
ネクタイを緩めながらテーブルいっぱいに並べられた料理の前に座った。
「どうしたの、これ?」
「あ、私が作ったんです!」
陽翔はとても不思議だったのか立て続けに聞いてきた。
「悠依ちゃんが? なんで? なんかの記念?」
「あ、天曳に連れて行ってもらったお礼、って思ったんですけど……こんなのじゃお礼にならないですよね?」
「そう、ありがとう悠依ちゃん! しかも僕の好きな唐揚げとチャーハンまで……」
そう言うと陽翔は唐揚げとチャーハンをうっとりとした顔で眺め聞いてきた。
「ねぇ、食べていい?」
「あ、どうぞ!」
「いただきます」
「いただきまーす!」
「あ、2人とも! あとからケーキもあるから!」
「うん!!」
連休最後の日。この日は悠依にとってとても騒がしく、しかし、とても楽しい一日となった。




