1 【日常】
入学式を終え、学園に知り合いも居なかった悠依だったが友達も増え、すっかり馴染んでいた。
(相変わらずすごいなこの混みよう)
全生徒数が1000人を超えるこの学園の朝の正門はいつも混む。
そんな生徒達であふれかえっている隙間を抜け、ホッとしている悠依の後ろに人影が見えた。
「わっ!」
突然のことに目を丸くしている悠依を見て爆笑している生徒、その人こそが悠依の初めて出来た友達、桐生梨緒だった。
「梨緒っ! やめてよー、びっくりしたぁ……」
「ごめんごめん、おはよ! 悠依」
「おはよ」
正門が混んでいるということはもちろん、校内も混みあっているということだ。悠依たちはまたも人ごみの中を掻き分け、階段を上り教室へと向かった。
「じゃあね、悠依」
「あ、うん。また帰りね~」
クラスが違う梨緒とは一旦別れ、悠依は教室へと入った。
「おはよう」
「ゆーい! おはよ!」
話しかけてきたのはそっくりな顔の2人、一卵性双生児の柊姉弟だった。
「おはよう、柚子、芹」
「今日の授業変更聞いた?」
「えっ、なに?」
「悠依悪魔とってないでしょ。やめなよ柚子、悠依を焦らせるの」
「だって~」
「忘れたのは柚子でしょ。僕言ってあげたのに……」
芹の言葉で悠依の謎は解けた。
「あ、忘れたの?」
「うるさいなぁ!」
「まあ落ち着きなよ。まだ始まったばっかだし」
「ほらお前ら、席につけよ~」
ガラッという扉の音とともに入ってきたのは悠依たちの担任、溝萩だった。
そうしてホームルームを終え、悠依たちの1日は始まっていった。
この学園の授業には国語や数学などの『必修科目』の他に、自分の持つ力ごとに分かれ、制御の方法や正しい使い方を学ぶ『特殊科目』というのがある。
例えば、陰陽師や巫女など和風の力は『芍薬』、悪魔や魔法師など洋風の力は『石榴』、動物や獣系の力は『薔薇』と言った具合にシンボルで分かれているのだ。
そんな特殊科目が終わり、昼休みに入った。
「悠依、行くよ~!」
「はいはい。ちょっと待ってー」
1時間のお昼休みを悠依は梨緒とともに屋上で過ごす。
梨緒はなぜか人から嫌われるタイプのようで、こそこそと聞こえてくる陰口たちから逃げるため、2人は屋上に行くのだ。