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18 【検査】

「――なんで芹が……これは芹がやったの?」

「何でって言われても困るんだけどな、うーん……まず一つ言えることは、“僕は君の味方じゃない”ってこと」


 悠依の目からは涙が零れていた。しかし悲しいわけでもない。 ただ単に芹が裏切ったことにショックを受けているわけでもない。

 思い返すと入学当初、芹は誰が見ても暗いとわかるような雰囲気だった。そして悠依が話しかけ仲良くはなったが、いつもどこか距離を感じていた。


(あぁ、芹は最初から……私が話しかけたときからずっと……)


 そう思うと涙が止まらなかったのだ。


「悠依。泣かないでよ。大丈夫だよ、酷いことはしない。――ただ、君の“検査”をするだけさ」

「……検査?」

「そう、検査。簡単だよ。血液検査、レントゲンとかね」

「なんのために、というかこんなことをしてまでする意味は? 芹、あなた1人でやったの?」

「もー、質問が多いなぁ。“こんなことをしてまでする意味”は学園長直々の命令だから。“1人でやったの”は他にもいるよ? ほら、蒼麻くんを足止めする役とかね」

「学園長……」


 この学園の学園長は滅多に人前に出ることはなく、その正体を見た者はわずか数人、という噂が立つほどである。


「そう、学園長。ちなみに僕は学園長直属の諜報部員(シークレット・エイジェント)だよ」

「なんで学園長が私を? ――そうだ! 遥季は!?」

「なんか学園長が君の出生に疑問を抱いたらしいよ? あぁ蒼麻くんは無事だよ? 今頃、相手してるんじゃない? ……なずなの」

「――まさか、なずなまで……」


 中学校のときの親友の名前を出され悠依は動揺した。 


「そうだよ? 気付かなかったの? 長い付き合いなんでしょう?」

「そうだけど会う機会なかったし。……ちょっと待って! まさか柚子までとか?」

「いや、柚子は違うよ。僕達本当の姉弟じゃないし。でも、うすうす感づいてはいるんじゃないかな?」

「そう……」


 2人の間にシーンとした沈黙がおりた瞬間、 ガチャと扉が開き入ってきたのはなずなだった。


「そろそろ良い? 検査始めたいんだけど」

「あぁ、一通りの説明はしたよ」

「そう、じゃあ行きましょうか、悠依」


 悠依はもう一度手を縛られ、目隠しをされ、検査室とやらに連れて行かれたのであった。

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