9 【穏やかな日々】
「はぁ……酷い目にあった」
昼休み、悠依は思わずそう呟いた。
あのあと悠依はしばらくの間、架威を囲んでいたはずの生徒達に囲まれ続けた。
四方八方から聞こえてくる『ほんとに付き合ってるの!?』『どこで知り合ったの!?』という声。
最初の間は答えよう……というか聞き取ろうと努力していた悠依だったが、あまりにも大量の質問が飛んでくるため途中であきらめた。
困り果てた悠依だったが、不意に架威が立ち上がり「行くぞ。悠依」と教室から連れ出してくれたのだった。
そのあと、授業中、休憩中と、ことあるごとに視線を集めた悠依だったが、今は昼休み。
いつものように屋上で梨緒と2人でお弁当を食べようと思っていたのだが。
「まあ、遥季は良いとしても......なんで架威がいるの!!」
悠依の目の前にいるのは4人。
梨緒、遥季、薙癒はまだ良いとしても、今の悠依には架威は許すことができなかった。
「そう怒るなって」
遥季は申し訳なさそうな顔をした。
「言わなかった俺も悪かったよ、悠依。俺が架威に頼んだんだ。悠依と付き合っているふりをしてくれって」
「なんで!」
「伊織の件もあったし、俺だっていつも悠依に付きまとえるわけじゃないだろ? だから架威に頼んだんだ」
遥季の説明で若干落ち着いた悠依はふとした疑問をぶつけた。
「だからって、なんで付き合ってるふりなんか……」
その疑問に答えたのは遥季、ではなく架威だった。
「都合が良いだろ。色々」
「色々?」
「あぁ。付き合っているふりをすれば俺は他の奴らに構われることはなくなり、お前に専念できる」
その答えを聞いた悠依は一気に冷めた。
「――何それ。自慢? “俺はモテるからな”みたいな?」
架威は口角だけを上げ二ヤっと笑った。
「そうとは言ってないだろ? ……まあ実際モテるけどな」
「あ、そう」
遥季は昔から“こうする”と決めたら変えないやつだ。知っていた悠依は反論する気もなくなった。
「まあ、これからよろしくな? 悠依」
「……最悪!」




