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悪魔の借用書  作者:
第一話 弁護士リベナの斬激爆破
7/32

『功績』

 《とある居酒屋チェーン店にて……》


「いやぁ……高木君が戻ってきて本当に助かったよ!!」


 金田部長は泡の立つビールが注がれたジョッキを片手に意気揚々とそう発言した。


「そうですねぇ……まさか一度解雇になってから戻ってくるなんて、前例がないというか奇跡ですよねぇ」


 続いて高木の後輩の一人が金田の言葉尻に乗っかる様に高木への肯定を示す。


「いや、そんな……」


 高木は手の平を横に振りながら謙遜し、もう片方の手でジョッキの淵を口につけた


「何を謙遜することが有るのかね!!」


「そうですよぉ、高木さんの御陰で会社が今の立場にあると言っても過言では無いんですから!!」


 場には会社帰りと思われる高木と金田部長、更に数人の若い社員が焼き鳥等を肴に立ち飲みをしていた。


 それぞれの表情は綻んでおり、暗い世相は感ぜられない。


 高木が予知能力を借用し半年の月日が経過していた。


「こないだのプロジェクトだって、君が企画して君が拡張したんだから」


 手にした『チカラ』は彼の社内で様々な功績を打ち立てた。


 高木はまず、自社とライバル社の先一週間の未来予知を行った。


 その上で自ら企画を考案し、社に提案書を持ち込みつつ入社を希望。


 最初は疑念を持った『』の面々であったが、一週間の月日が経つと態度は一変。


 高木の入社を認めざる負えない結果と成った。


 その後は『チカラ』を多用し未来の情報を搾取。


 それらの情報を元にして次々と成功を収めていったのであった。


「はっはっはっ、最早私も君には頭が上がらんよ」


 これらによって勝ち取った功績の数々は、自らに失望した者達の信頼回復を容易く成し遂げた。


 上機嫌で大口を開く上司に対し、にこやかな応対をする高木であった。


 が、実は先日に社長直々に昇進の手立てがされることが決定しており、翌月には金田部長は高木に対して本当に頭が上がらない立場となる予定であった。


「君みたいな部下を持って誇りに思うよぉ」


 金田自身はその事は知らず、終始高木に対しては上からの態度をとっていた。


 高木はその事を複雑に思いつつも微笑みながら「ありがとうございます」と会釈をした。


 高木はこの後帰宅の途につき、自宅にて今後の予定を立てる事となっている。


 そして『チカラ』で視る未来予知においてもそれは変わらなかった。


「あの……」


 そんな考察を張り巡らせる中、高木を可愛げのある女性の声が呼んだ。


 それは彼の予知には含まれていない事象であり、『含まれない』対象の訪問である事を物語っていた。


 高木は未来予測に無かった事態に驚き、半年前にも聞いたその声の方へと振り向いた。


「あ、アナタは……」


 高木は目を見開き、背後に現れた『彼女』の存在を確認した。

 笑顔で微笑むは半年前、高木に『未来予知チカラ』を授けた張本人。

 『スカル・カンパニー』社員、社員匿名コードネームネイルの姿であった。


「景気いいみたいですね……どうやら」


 ネイルはニコリと高木に笑いかけ、首を横に傾けた。


「ん、我が社の社員じゃないみたいだねぇ……高木君、ソッチの方面でもなかなかやるじゃないかぁ」


 金田はネイルに目をやり、茶化すように高木の肩を叩いた。


 高木は苦笑いと共に、にこやかに微笑むネイルの表情を確認した。


「ふふっ……少しの間、部下さんを御貸し頂けますか?」


「どうぞどうぞ、彼は良い男……良物件ですよ!!」


「ふふっ……そうですか……」


 そう返事をするネイルは、金田の高木に対する言動をチェックしている様にも感ぜられた。


「ちょ、ちょっとこちらへ……」


 高木は慌ててネイルの腕を引っ張り、店の外へと連れて出た。


「ふふふっ、お久しぶりですね高木さん……半年ぶりですよね」


 外に連れ出され、あの時の様な路地裏で二人は再び対面した。


 ネイルは前回と同じ様に微笑み、高木は脂汗を額に浮かべていた。

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