98日目 姉の弱点
「メガネに地味色のスーツを着て、本格的だね」
「役になりきるにはまずは形からよ」
マサヤが珍しく自室の机についているが、椅子をひいただけで埃の塊が出てくる。
「マサヤ、どれだけ勉強してないの?」
普段のヒカリは身内に対しては甘党すら驚く甘さだが、勉強や一般常識の、社会に出てから必要となる面に限ってはまともなのだ。
だからお説教される前にマサヤは知恵を絞る。
「姉ちゃんのことを考えて胸がいっぱいだったんだ!」
これなら、とヒカリを見れば唇を不満そうに窄めていた。
「そんな言い訳は通用しません。なぜなら、私は四六時中、マサヤの過去と現在と未来と、これから起こるであろう、姉と弟の禁断のベッドシーンを毎日妄想していても、私は日常生活に支障をきたしません」
「ハイスペックすぎるからだよ……」
そんなこんなでまともに勉強を開始。
「あの姉ちゃん」
「くんかくんか」
「耳元で匂いを嗅ぐのはやめてくれるかな」
合法的に近づけるヒカリは無言だ。
「うーん、ここ難しいな」
「ここはこうしてこう」
「途中式は?」
「頭の中でやったから平気」
「全然わからないよ!」
「やっぱお姉ちゃんじゃ無理か」
部屋の外から覗いていたアカリがぼやく。
「頭の良すぎる人は、わからない人がわからないって言うのがわからないんだよ。そんな問題出来て当たり前だから」
「僕が馬鹿すぎるのか……」
「問題ができたご褒美に抱きしめてあげる!」
「それ姉ちゃんが解いたんだよ!」
普段から勉強はがんばりましょう。




