90日目 地球は片手で潰せます
「おはよう、マサヤくん。今日も朝から元気にずっこけてるね」
顔にかかった髪を右手で押さえながら、左手を差し伸べる。
「連載漫画のようにシーンが続いてる――ってそうじゃなくて、ありがとう。ヒトミさん」
「ブタミ……?」
「ヒトミさんだよ、ヒトミさん」
「あはは、おかしいね。この子、妹さん?」
目だけで笑うヒトミ。
「彼女とかだったらマサヤくん、眼科行った方がいいよー」
おしとやかに笑うヒトミ。
「ドグサレビッチが……」
「なあにー? 妹ちゃん、かわいいねー」
マサヤに笑顔を向けたまま、小さなアカリの頭を撫でようと手を伸ばすが、その手をマサヤを叩くような強さでひっぱたく。
「豚インフルエンザとビッチ臭が移る」
「お、おかしなことを言うのね。なんで私、こんなに嫌われてるんだろう? あ、もしかしてあのラブレターのこと、妹さんに言ったの?」
「ら、らぶれたー?」
アカリは2日前のフラグを思い出し「こいつがお兄ちゃんにラブレターを送った、血迷った女か!」と一瞬ですべての苛立ちのぶつけどころとして認定した。
そもそもマサヤに馴れ馴れしく話す時点で気に食わない存在なのだから、アカリとヒカリにとっての共通の敵であることには変わりなく、その頭の中で鳴り続ける警鐘の正体見たり!
「マサヤくんのこと妹ちゃんから取ったりしないよ。ラブレター出したのに、約束の場所に来てくれなかったし」
「……僕はまだ月面には行けないんだよ。ホワイトドールを掘り当ててないから」




