9日目 君に届け
日曜の朝は平日よりも緩やかに時間は流れるが、両親は日頃の疲れを取るために遅くまで寝ている。
「お兄ちゃん、お腹空いた」
「白米あるけど、なに食べたい?」
「目玉焼きに決まってるじゃん」
「決まってたのか……。黄身はどうする?」
「半熟に決まってるじゃん」
「それも決まってたのか」
そう文句を言いながら、ホットミルクを作って寝起きでパジャマ姿のままのアカリの前に置く。
当然アカリはお決まりのソファー席だ。
「卵をフライパンに落として、すぐに焼ける。さすがIH」
「スラムダンク見たくなってきた」
「残念ながらインターハイではないが、そうこう言っているうちにできたぞ」
白米を盛った茶碗と目玉焼きをのせた皿をテーブルに運ぶ。
「それにさ、今の時代なら黒子じゃないの? 女子的にも」
「それより醤油忘れてる。持ってきて」
「はいはい」
指図されるままにキッチンに戻って醤油を持って戻る。
「ご飯にくぼみを作って、卵の黄身を真ん中に置いて、箸で穴を開けてから醤油を垂らす」
「やっぱそれが一番美味しいよね。僕もやろう」
「この食べ方は私の食べ方。お兄ちゃんはいつの間に、完全模倣を身につけたの?」
「キセキの世代を舐めちゃいけない」
「お兄ちゃんは黄瀬にはなれない。顔面的に」
「わかってるよ! 目玉焼き一つでこんな展開になると誰が思った! それにやっぱ黒子好きじゃないか!」
日曜日も変わらずに、我が家は平和です。