80日目 朝は鉄板焼き
「やばい寝坊した! 遅刻しそう!」
朝の忙しい時間。
両親はすでに仕事に出ていて、アカリもすでにいない。
制服に袖を通してリビングに顔を出せば、夜勤バイトあがりのヒカリが優雅にコーヒーを嗜んでいた。
「姉ちゃん、ごめん。戸締りとかお願い」
「いいけど、それはつまりマサヤの股間の戸締りも私がしていいのかしら?」
「うわぁぁ、チャック閉め忘れた」
慌ててチャックを上げる。
「あ、マサヤ、いくら急いでるからって朝はなにも食べないとお昼までもたないわよ。ほら、私が食べようとしたトーストを……トーストを……」
くれるものならもらおうと手を伸ばしたマサヤの手をヒカリは乱暴に叩いた。
「ごめんね。これは渡せないの!」
「どうして?」
「だってこんなの銜えて登校したら転校生とぶつかって、ラブコメ展開が始まっちゃうじゃない!」
「転校生とか来ないけど!」
「そんな鉄板ネタは嫌なの! こうなったら、カキ氷にする?」
「食べにくいし、お腹に溜まらないし、トイレが近くなるだけだよ!」
「ま、行儀悪いことは私がさせないけどね。でも、ごめんね」
「なにが?」
「マサヤの目覚まし時計止めたの私だから。ほら、早朝のコンビニシフトから帰ってきて、マサヤを堪能してるのに鳴るから邪魔で」
「どっちが鉄板ネタで行儀悪いの!」
朝のマサヤは少々気が立っているようでした。




