6日目 ふぁんたじー?
「素朴な疑問なんだけど、いいかな?」
「前にも言ったけど、聞けば教えてもらえるなんて、そんな甘い考えじゃこの世の中でやっていけないよ」
「この作品のキーワードに『ファンタジー』って設定されてるんだけど、僕ってもしかして世界に一本しかない剣を抜いて、伝説のドラゴンと戦ったり、後楽園ホールで握手を求められたりして、そのうち日曜の朝に僕の名前を冠した特撮とか始まるのかな?」
「『中二病で兄が痛い』」
「僕は決して痛くないよ! 素朴な疑問がそこまで昇華しただけだよ。あと『学園』とか設定されてるじゃん、家から出るの? アカリ」
「そういえば、私ずっと家にいるね」
「この番組は日曜午後六時台のアニメです」
「あれは外に出るし、これはアニメじゃないし。たぶん、私学校には行っている設定だよ」
「設定言うなよ」
「でも、私がずっとここにいるのにはちゃんとした理由があるんだよ?」
ぎゅっとアカリが僕の手を掴んでくる。
「お兄ちゃん」
キラキラとした瞳が真っ直ぐ向けられる。
「いつもは素直になれなくてごめんね。私、駄目だと知ってても、お兄ちゃんへのこの思いに嘘は吐けないから……」
「アカリ……それって」
「うん。兄と妹で駄目なのはわかってる。私だって苦しいの! でも、私たちは結ばれないから」
「大丈夫! 父さんと母さんは僕が説得する!」
差し出した手を、思いっきりアカリに叩かれた。
「っていう、仲良しを通り越した異常愛がファンタジーって言うの」
「え? ファンタジーってそういう定義なの?」