50日目 王子様は空を飛ぶ
「アカリ、テニスやろう!」
「ええ、絶対にやらない」
「なぜ? 決して王子様な漫画は読んでない!」
「そういうことじゃなくて、あのアンスコ履くんでしょ? 恥ずかしい」
「アンダースコートね。あれ可愛いよね。って、そうじゃなくてテニスやろう。今日学校の体育で初めてテニスやったんだ!」
「じゃあいいじゃん」
「違うよ、これはねドッジボールと違って僕のボールを相手が返してくれるんだよ! バスケとかサッカーでボールが回ってこないこととかないんだよ!」
「ああ、そういうこと」
コミュニケーションを取れて嬉しいのか。
「テニスか……。あんなイケメン集団そうそういないし、現実にいるのはおばさんばかり」
「イケメンなら僕がいる!」
「ちっ」
「舌打ちやめて! 怖いからその顔も!」
「ところで、お兄ちゃんはテニプリ読んだの?」
「存在は知ってるけど、実は読んでないんだ。スポーツ物って動きが肝心だからなんか避けちゃう」
「ふーん、私持ってるから読んでみれば。特に新しい方」
「いしだぁぁぁぁぁ! なんで人がホームランされんの!?」
「いいお兄ちゃん。テニスでは人は飛ぶぞ」
「僕テニスやめるよ」
「よろしい。ついでだから、コーラ買ってきて」
「なんのついで!」
「吹っ飛ばされるついで」
「飛ばされるか!」
しかしコンビニまで走っている間は風になれたという。




