48日目 自由なあいつ
「人間は空を飛べるのだろうか」
「お姉ちゃんが飛行機に乗っているからって、なに窓の外を見て黄昏ているの? 窓に映ったお兄ちゃんの顔きもい」
「ってどこ行ったの?」
「確かピザ作りがどうとかでイタリア」
「すごいなぁ、姉ちゃん」
なにをしても、なにをさせても万能なのだから非の付け所がない。
「唯一あるとすればお兄ちゃんのことを本気で大好きってことか」
「それは汚点なのかい?」
「だってお兄ちゃん、一人じゃなにもできないじゃん。友達いないし」
「しかし考えて欲しい」
「なによ」
「漫画の主人公というのは常に一人だ」
「うん」
「世の中には自分という人間が一人しかいないのもまた事実」
「そうだね。で、このオチがなさそうな話のオチは?」
「王とは常に孤独なものだ。そうまるで」
窓の外、家の塀の上を一匹の三毛猫が尻尾を天に伸ばして、優雅に歩く。
「まるで、あの猫のように」
「だからオチは?」
動物嫌いのアカリに対して動物が好きなマサヤは窓を開けて、サンダルを爪先にひっかけて外へと出て猫に手を差し伸べる。
「この世にオチなど必要ない。飛行機が落ちて困るように」
みゃー。
「いたっ」
「ひっかかれてやんの。自由人を手懐けるのは難しいのよ」




