39日目 賞金王に俺はなる!
「みんゴル極めたー!」
「……集中してたから言わなかったけど、テレビに息吹きかけても、カップ手前で止まったボールは転がらないと思うよ」
「気合だよ、気合」
「たかがゲームじゃん」
「ふっふっふっ、僕の腕ならアカリに負けない」
「私、やったことないし。ゴルフ興味ないから」
「なんで? 面白いし、ほらここ最近ってわけじゃないけど、男女ともに若い選手がツアーで優勝してるじゃん。それになにより儲かる」
「……そんな邪まな考えじゃ上手くならないと思う」
「アカリってスポーツ嫌いだよね」
実際にやるのも、テレビで見るのも、体を動かす類のものを基本的に嫌っている節がある。
「そうかな? 好き嫌いで考えたことない」
「でもさ、夢があると思えない? 技術で他者を圧倒して、賞金までもらえる。勝負の世界」
「それなら私はこれでいい」
珍しくキッチンのテーブルで作業に没頭していたアカリが顔を上げて、手にしたものを見せた。
「スクラッチくじ。同じ一攫千金なら楽して稼ぐ」
「そんな甘い考えで世の中が回るほど――」
「あ、一万円当たった。欲しかったミュール買える」
「……あのさ、十枚削っていくら当たった?」
「一万六千円」
「人それぞれ目指す道は違うってことか」




