30日目 うたってみた
「マサヤ、アカリ、カラオケに行こう」
「ええ、カラオケぇ」
アカリが融合しているのではないかというぐらいに、そこにいることが当たり前となったソファーに寝転びながら不満を漏らす。
「姉ちゃんとカラオケって実は1回も行ったことないよね」
「そもそもお兄ちゃん、カラオケに行ったことあるの?」
「……ゲームの中でなら」
「へえ、すごーい」
感情のこもらない棒読み。
「まずドリンクとハニートーストを注文するんだけど、それだけじゃ足りず、ピザとポテトも欲しくなるんだよね。で、1曲歌っている間に、ドリンクとか運ばれてくる」
「シミュレーションだけは相変わらずできてるんだね。友達作ればいいのに」
「友達に誘われた時用だよ!」
「その友達がいないんじゃん」
根本的に順番が間違っている気がしてきた。
「マサヤ、続けて」
「うん。で、店員さんが入ってきたら、小声になるんだよね」
「気まずいからね」
「そんなマサヤも可愛いね。というわけで、行こう、カラオケっと」
「なんでお姉ちゃん服を脱いでるの?」
ソファーに座りなおして、ちょっと嬉しそうな顔をしていたアカリが突然服を脱ぎだしたヒカリに向かって叫ぶ。
「うちにカラオケあるじゃない。毎日、マサヤとアカリが歌ってる」
「それお風呂!」
姉の行動に二人のツッコミでハモった。
「私もマサヤとデュエットしたい」




