3日目 武将とか奉行とか
「ねえ、お兄ちゃんってさ、将来なにになりたいの? くだらないこと言ったら、二度と口利かないから覚悟してね」
どうやらアカリが学校の宿題で、家族の子供の頃、将来なりたかった職業についてのアンケートのような宿題を持ち帰ってきた。
そのプリントを見れば、子供の頃になりたかったものと、現在の職業を書く欄がある。
「サッカー選手とか」
「帰宅部なのに?」
「え、だって別にそれ現在進行形でとかじゃないでしょ? なりたいものならなんでもいいんじゃないの? 私の彼はパイロット的な」
「お兄ちゃんの彼氏のこととか聞いてないから」
「ホモ説やめて。本当にやめて」
「じゃあさ、お父さんとお母さんのは聞いたことない?」
「そんなの本人に聞けばいいじゃん」
「二人とも、今日帰り遅いって。だからお兄ちゃんが作った下手くそな夕飯食べたんじゃん」
「……それこそ明日聞けばいいんじゃない」
「明日提出だもん」
「もっと早くやればよかったじゃんか」
「ぐだぐだ言う男はモテないよ? シャーペン刺すよ?」
「恐ろしい妹だ……」
父も母の尻に敷かれているので、この家庭の血筋はどうやっても覆せないようだ。
「母さんは戦国武将とか好きな歴女だから将軍とかじゃない?」
「姫じゃないの?」
「あんな乱暴な姫はいない」
「じゃあ、お父さんは?」
「……鍋奉行とか焼肉奉行」
「アカリ、あれは家来って言うんだよ」
宿題を出し終えた後日、改めて聞いてみれば、あながち間違えではなかったらしい。