26日目 備えあればなんとやら
「お兄ちゃん、気象予報で豪雨注意報出てるから庭の洗濯物入れた方がいいんじゃない」
「わかった。……けど、手伝ってはくれないんだね」
無視するかのようにアカリは携帯電話を弄りだした。
庭へと通じる窓を開けて空を見上げれば暗雲が垂れ込めている。
「最近、ゲリラ豪雨とか増えたよなぁ」
室内のアカリに手伝ってほしいなと目を向ける。
「反応がない。屍のようだ」
「殴るよ」
「撫でるよ」
殴ろうとするのは例に漏れずアカリで間違いないが、もう一つの声が背後から聞こえた。
「んふふ」
振り向いたらやつがいた!
「姉ちゃん!」
「はい、お姉ちゃんです」
背の高い、抜群のスタイルを見せびらかすような挑発的な服装をした姉のヒカリが満面の笑みを浮かべて、洗濯物を取り込むのを手伝ってくれている。
「私がタオル類やるから、マサヤは服とか下着を入れちゃって」
「うん」
毎日帰ってきても時間が合わないから、滅多に会えない姉との突然の再会。
「ほら、その黒のブラジャーは私のだからね。そっちの赤いパンツも。あと紫のシースルーのも」
「う、うん……」
中学生男子には刺激が強い。
「んふふ、照れちゃって可愛い」
「お姉ちゃん、世間の目と耳があるから外でお兄ちゃんをからかわないで」
結局雨は局地的だったらしく、この家の周りでは降らなかったが、豪雨よりも被害をもたらす姉が帰宅した。




