13日目 満月を打ち落とせ!
「ペットを飼いたいんだ」
「死ねばいいと思うよ」
「……あのさ、宿題で疲れたアカリの疲労を和らげてあげようと、僕なりの配慮の言葉なんだけど」
疲れているからってあんまりじゃないか。
「で、なにを飼いたいの? 言ってご覧、聞いてあげないから」
「聞くだけならタダだよ!」
「私の怒りのボルテージがあがる」
「タダより高いものがない!」
冷蔵庫から牛乳パックを取り出して、コップに注いで飲んでいる。それぐらいに疲れているってことだ。
「で、なにを飼いたいの?」
「その言葉二度目だよ」
「……じゃ」
「嘘! 嘘です、冗談です! 聞いてください。僕はね、犬が飼いたいんだ、犬!」
「へえ。……これでいい?」
「え、うん……」
なんか泣きそう。
「でもさ、犬って遠吠えして夜とかうるさいんじゃない? 私、犬嫌いだからよく知らないけど」
「満月に向かって吠えて変身するんだよ」
「なにに?」
「大猿じゃない?」
「あのさ、ちょっと聞いていい?」
「なんだい、アカリ」
「お兄ちゃん、今日で夜更かし何日目?」
「えっと……姉ちゃんが帰ってくるまで起きてようとして、三、四日かな」
「睡眠不足だから、私が動物嫌いなのも忘れてるんでしょ」
「どうりで瞼が重いはずだ!」
「ちなみに、このペットのやり取り、この三日で九回目だから」
だからアカリが不機嫌なのか、納得。




