1日目 自己紹介
「自己紹介ほど自分でするのに困ることないよな。学校のクラス替えとかの後さ、わざとらしくするじゃん? あれって面白いこと言おうとして滑ったら、試合開始前に試合終了みたいな空気じゃん?」
「お兄ちゃんのそういう無駄な語りの方が身を滅ぼすと思うよ」
「そうだな。じゃあ、いっそ僕の自己紹介をしてくれよ」
「……面倒」
「今、すごく凶悪そうな顔をしてるけど、この悪い顔をお茶の間のみなさんにお送りできないのが残念だ」
「元よりこれはお茶の間には流れないから」
「そうだけど、長男の僕の自己紹介してくれよ。そしたら僕もしてやるから」
「あとでポッキーね。コンビニで」
「近所のスーパーの方が安いんだけど、なんでわざわざコンビニ?」
「嫌がらせ」
「……まあ、お財布に相談してからな。駄目ならプリッツだ」
こほん。
「長男、中学生のマサヤ。趣味はガキっぽい。兄の癖にセコイ。女にモテない。男の友達もいない。むしろ存在価値も不明」
「酷い! せめて僕はアカリのお財布として存在を許しておくれ!」
「社長になったら考えてあげる」
こうしてマサヤの社長になるための人生が始まる――。
「今、地の文で軽く嘘が出た!」
「人間、向上心が大事ってことだよ」
「なるほど。じゃあ、まずはアカリを屈服させるために、マリカで勝負だ!」
「いいけど、その前にポッキー買ってきて」
「……はい。ってここにいない姉ちゃんの紹介は?」
「それよりプリン食べたい」
「フリーダム!」
「不殺の精神を私は持たないから、すぐに行け」
「キラさまぁぁぁぁぁぁぁ!」