第三話 馬鹿
見てくれている人がいて嬉しいです!
対話はとても大切だ。そう、ちゃんと話し合えば相手も人間なのだから理解してくれるはずだ。平和的解決こそ、最善の選択。love and peace こそ地球を救うのだ。
というわけで、僕は女の子に対話を図ろうと話しかけた。
「えっと……、僕はちょうど通りかかっただけで――――」
「問答無用!!! 」
ヒュンと日本刀が一瞬前まで僕の首があったあたりを横に凪いだ。僕は、ほぼ条件反射でバックステップでこれをよけていた。よけてなかったら今頃肩から上はなくなっていただろう。思わず冷や汗が出た。
「な……っ、よけただと……! 」
女の子が驚愕したようにつぶやいた。たしかに今の一撃はすさまじく研ぎ澄まされたものだった。僕だからよけられたものの、一般人がよけることはまず不可能だろう。
「ふふふ、面白い……」
女の子が、不敵な笑みを浮かべて刀を構えなおす。いくらなんでも、あんなのをこの状態で何回も避けることは不可能だ。
「あの! だから僕はなにもしてな――――」
「黙れ!! 犯人は必ずそういうことを言うものだ!」
一蹴されました。
「は!! 」
言い終わらぬうちに、女の子は驚異的な瞬発力で僕を射程圏内に捉えていた。すさまじい斬撃が全方向から襲いかかってくる。これを僕は、紙一重で避けていく。全てが必殺の一撃。今の状態で一発でも喰らえばアウトだ。
「なるほど、これでも当たらんか。なら……」
そう言うと、女の子は今までよりもさらに研ぎ澄まされた左上からの斬撃が僕に放ってきた。すばやい左へのステップでこれをよける。
が、女の子はここで驚きの行動に出た。なんと、斬撃の勢いを利用してそこから左回し蹴りを放ったのだ。まったく予測していなかった攻撃に、僕はまともに蹴りを腹に受けてふっとんだ。刀の動きばかりに気をとられていた! 急いで体勢を立て直したが、すでに彼女は僕に接近し、刀を振り下ろしていた。間一髪、刀を両掌ではさんで受け止めた。いわゆる白刃取りというやつだ。なんとか受け止めたものの、女の子は容赦なく押し切ろうと力を入れてくる。体勢的には圧倒的に彼女のほうが有利。このままではやられるのも時間の問題だ。
「ちょ、チョイ待ち! 」
僕は必死に女の子を説得しようとする。
「待たない!! 」
女の子がさらに刀に力を入れる。必死に抵抗する。と、僕の視界の隅のほうに被害者の遺体が映った。この距離なら被害者の状態がわかる!
「そ、そこに倒れてる女のひとを見てよ!! 右手首あたりを重点的に!! 」
「ふん、注意をそらそうという魂胆が見え見えだ!! 」
「そんな考えないから! 頼むから!! チラッと見るだけでいいから!! 」
僕の必死の頼みに女の子はしぶしぶだが被害者のほうをほんの少しだが見てくれた。刀からは力を全く抜いてはくれなかったが。
「見たが……」
「女の人の手首に傷があったでしょ!? 」
「ああ。あったがそれが何だ?」
「ほかに目立った外傷はなかったよね!? 」
「そうだが、それがどうし――――」
「あの傷だけで、これだけの大量の血を流させるなんて僕には無理だ!! 」
女の子が少し考える動作を見せた。これは・・・、いける!
「道具を使えば可能かもしれないけど、君はいきなり現れたから僕はその道具を隠す暇もなかったはずだ! だけど、その道具もない。つまり、僕にこの犯行は不可能なんだよ! わかる!? 」
僕は、なんとか説明をした。ぶっちゃけ、道具を隠した後に女の子が来た可能性もあったりと、かなり穴のある説明なんだけど、これで信じてもらうよりほかにない!
「そこに置いてあるかばんの中も見せてあげるから! それまでは首に刃を当てていてもいいから! だからとりあえず僕を信じて!! 」
しばらくの沈黙の後、わかってくれたようで、女の子がにこっとほほ笑んだ。それを見て、僕はほっと息をついた。
「そんなこと知るかぁぁぁ!!! 」
全然わかってくれてなかった!!
「なんで!? どこらへんが!? 」
もしかして、道具らへんのところを不審に思われたのか!? そう思ったが、僕の想像のはるか上を彼女はいっていた。
「お前の言ったことは、難しすぎて全くわからん!! 」
「え」
かなり噛み砕いて説明したはずなんですけど。
「逆に話を聞いているうちにムカムカしてきた! 貴様はここで私が殺す!! 」
僕は思いました。この子バカだーーーーー!!!
なんか、書いているうちにヒロインがバカになりました……。