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A MEMORY OF BLOOD   作者: T.N
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第二話 目撃

三時間もかかってしまった……。

 学校が終わり、僕は事件について調べるために町に向かうことにした。

 昼休みに携帯のワンセグで見たニュースによると、事件が起こっているのは全て町で、しかも路地裏であるらしい。しかも、ラッキーなことに被害にあった人の死体が発見された場所まで報道されていた。

 とりあえず、その周辺をうろついてみることにした。


「あれ、貴大どっか寄ってくのか? 」


 校門を出たあたりで一緒にいた健二に声をかけられた。


「うん。ちょっと用事があってね」

「そうか。じゃ、俺も……」

「ダメ」

「まだ言い終わってない! 」


 あくまでついてこようとする健二を説き伏せるのに、かなりの時間がかかった。











「ふう」


 とりあえず被害者が出た順に、全ての場所を回ってみたが、特に情報は得られなかった。

 現場は全てラインで仕切られており、一般人は立ち入り禁止で、遠目からしか確認ができなかった。

 五人目の死体があった場所にはまだ血痕が残っており、周囲にまるでバケツでぶちまけたように血がこびりついていた。


「ふむ……」


 帰りの道を歩きながら僕は考えた。

 いったい、犯人はなにがしたいのか、全く分からない。まあ、気がふれた人の考えなんて僕にはわかるわけはないけれど。

 それよりも気になるのは、あの血の飛び散り方だ。あれは異常だ。もしあのようなことをするならば、全身を木端微塵にするぐらいしなければいけないだろう。

 だが、ニュースでそのような報道はない。ニュースでとりあげられないよう、情報操作をしているということも考えられるが、もしニュースが本当なら、犯人は被害者に大きな傷をつけることなくあの血を体外に出させたということになる。そんなことが人間にできるだろうか。

 と、なると・・・。


「人間じゃない、か……」


 一番考えたくなかった結論に達してしまった。


「で、でも一般人が起こしたってことも考えられないこともないし……」


 自分で自分の考えを否定しようとする。と、


「ん・・・、あれ? 」


 気がつくと道には人がいなくなっていた。いかに裏路地といっても街中だ。普通、一人ぐらいは人がいるはずなのに、僕以外全くいない。

 腕時計をみるともう七時。事件のせいでみんな夜道を歩くのは控えているのだろう。

 僕も早く帰ろうと思った時だった。ツンと、いきなりきついにおいが鼻についた。体のそこから衝動が湧き上がってくる。

 これは・・・、


「血だ!! 」


 僕は思わず叫んでにおいの方向へと走り出した。これだけはっきりとにおいがするのだ。かなり近いはずだ。






 四つ目の角を曲がると、そこは血の海だった。

 濃い血のにおいに、さらに湧き上がってくる衝動を必死にこらえてよく見ると、その血の海の真ん中に人がうずくまっており、なにかしていた。もっとよく見たいが、ちょうど暗い場所にいるためよく見えない。

 しかし、こいつが犯人だと確信した。幸いなことに、相手は僕に背を向けている。攻撃するなら今だ。

 が、それが実行に移されることはなかった。

 どこからか現れた猫が、僕の足元にあった空き缶を吹っ飛ばしていったのだ。カランと、乾いた音が裏路地に響いた。なんでこんなタイミングで!?


「がっ・・、猫っ! 」


 その音に反応して、犯人がこちらをむいた。不気味に光る目が僕を捉える。

 その目を見た瞬間ゾクッとした。これは、一般人の目じゃない。こんな目の人間は今まであったことがない。

犯人は僕を見ると、すばやく僕の側とは反対の曲がり角へと姿を消した。


「ま、待て!! 」


 僕も急いで角を曲がるが、すでにその姿はなかった。はやい。人の動きじゃない。

 そんなことを考えながらも、とりあえず追跡はあきらめてもう一度血の海を見渡す。すると、隅のほうに人形のように被害者であろう女性が転がっていた。脈を確認するが、ない。これだけ血を出していれば当り前だろう。

 僕は、被害者に手を合わせてから体を調べた。だが、外傷がほとんどない。あるのは右手首に残った少し大きめの傷だけ。この傷でどうやってこれだけの血を? だが、とりあえず相手が人間でないことはたし――――。


「見つけたぞ!! 」


 考えこんでいると、いきなり背後で声がした。思考を停止して僕が振り向くと、そこに女の子がいた。年はおそらく僕より少し上くらい。髪をポニーテールでまとめ、うちの学校のものではない制服を着ていた。

 この状況で、微塵もパニックにおちいる様子を見せていないことに驚愕したが、本当に驚いたのはその顔に目を向けた時だった。おもわず目を見開いてしまった。瓜二つだったのだ。妹に。


(お兄ちゃん、大好き!! )


 頭の中で、かわいかった妹の声が思い出される。

 ……美咲。


「犯人め! 今日こそ成敗してくれる!! 」

「へ? 」


 女の子の叫び声でどこかにとんでいた僕は我にかえった。いつのまにか、女の子はどこから取り出したのか日本刀をこちらに構えて僕をにらみつけている。

 たしかに被害者のとなりにいる僕は、はたから見れば犯人に見えなくもない、というかまんま犯人に見えるわけで……。


「…………、はぁぁぁぁ」


 僕は、深ーくため息をついた。猫といい、女の子といい、今日は不幸続きだ……。

初の女性キャラ登場です!

うまく動かせるかな・・・。

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