第一話 狂気
初投稿です!
ビチャビチャと水がはねるような音が響く。しかし、それは水ではなかった。明らかに致死量と思われるおびただしい量の血液が、周囲に飛び散っていた。
そして、それは血だまりの中にいた。それはゆっくりと血液をすくい上げ、掌からこぼれていく様子を見つめていた。そして、ニヤリと嬉しそうに笑ってつぶやいた。
「アア、タノシイナ……」
血が全て落ちるとそれは、再び血をすくい上げた。血が水のように落ちていく様子をそれは、じっと見つめていた。
目を開けると、無機質な白い天井が目に写る。いつも通り、僕の部屋の天井だ。チュンチュンという鳥のさえずりが聞こえる。窓からさしこむ春の陽気が気持ちいい。
うん、今日もいい目覚めだ。伸びをしながら、枕元の時計で時間を確認する。時刻は、七時半。うん、時間もばっちり。僕は、布団から起き上がった。
手早く朝食をとり、高校へ行く準備をすませて、僕はリビングの隅にある仏壇へと向かう。
その前で手を合わせる。僕の毎日の日課だ。どんなに急いでいる時でも、これだけは決して欠かさない。
「行ってきます」
僕は、写真に向かってつぶやいた。写真からは、いつもと変わらぬ三人の笑顔が僕に向けられていた。
僕の通う東南台高校は、学力そこそこ、設備などもそこそこという普通すぎるくらい普通の高校だ。ちなみに僕は、一年三組。一学年にクラスは五組まであり、学力によっては決められておらず、パソコンによる完全なランダム制になっている。
教室に入ると、すぐに僕はある異変に気がついた。生徒が少なすぎる。もうホームルーム開始まで十分を切っているのに。
「よっ、貴大」
僕が不振に思っていると、いきなり腕を首にまわされた。ぐいぐいといい具合に首を絞めてくる。
「お、おはよう健二。苦しいから離して」
「おっと、絞めすぎたか。わりぃわりぃ」
健二はすぐに腕を離してくれた。僕は首をさすりながら健二のほうを向いた。
あいかわらずのキンキンに染められている金髪に、なんだかバカみたいな顔。僕の友人、もといおこぼれを狙うコバンザメである村上健二がそこにいた。
「待て。今すごく失礼なこと考えなかったか? 」
「え、特には。ただいつも通りだなって」
あいかわらず第六感だけはさえてるな。バカのくせに。
「そうか?そう言ってる今も――――」
「そんなことよりさ、なんか今日人が少なくない? 」
話を遮って僕が言うと、なんかこいつバカですかって顔された。テスト全て三十点以下を出した君にはされたくないな、そういう顔は。
「……、お前知らないのか? 」
「なにが?」
「……、マジで知らねえみてえだな」
なんか、勝った! って顔されると非常にむかつくんですが。
「しかたねえなー、教えてやるよ。今、このあたりで殺人事件が頻発してんだよ」
全然知らなかった。あ、なんかホントに負けた気分になってきた。
「ものすごいニュースになってるんだぜ」
「僕、ここ一週間テスト勉強ばっかでテレビ見てなかったから」
「バカだな。いかに頭が良くても、使いこなせないようじゃ、宝の持ち腐れってやつだぜ」
……テスト前日に泣きついてきたくせに。次からは助けないことにしよう。
「ごめんなさい!出来心だったんですぅ!! 」
「お前は超能力者か!! 」
ほんと、六感すげー。いや、本当に超能力者だったりして。
「ゴホン、えっとそれでな、今ニュースになってるだけでも昨日の犠牲者を合わせて五人もいる。この一週間で五人だぜ?頭いかれてるとしか思えねーよ」
確かに、犯行スピードが異常だ。こんなに短期間で人を殺せば、騒ぎが起きることなんて目に見えているのに。
「しかも、死に方がなんか変らしい。なんでも、全身の血が抜かれてるんだとよ」
全身の血が抜かれている?
「それ本当? 」
「あ、ああ。ニュースで言ってたからまず間違いない。なんだ、いきなりくいついてきたな」
「…………」
「とにかく、そういうわけで自主的に欠席している生徒が結構いてな。学校側も黙認しているみたいだ。ま、事が事だからな………って聞いてるか? 」
「え……、う、うん」
僕の挙動が変なことを健二は気にしたようだったが、ちょうど担任が入ってきたため、ごまかすことができた。
それにしても、血が抜かれているって……、いやまさかな。
僕は、自分の考えを否定したが、授業中も事件のことが頭から離れなかった。おかげで先生に三回も怒られた……。
ど、どうだったでしょうか?(汗)
誤字、脱字、感想があればお願いします。
泣いて喜びますので!