【甘えんぼ】独占ぎゅっ♡ あなたにだけ甘える夜
部屋に入ると、ソファの前に立つ彼女――桜雨くりすは、頬を少し赤らめ、目を輝かせていた。
「ねぇ、今日ね、ずっとこの時間を待ってたんだ。
だって、くりすね、ぎゅってしてもらいたかったの。もう、我慢できなかったんだもん……」
両手を胸の前で組みながら、恥ずかしそうに笑う姿が、どうしようもなく愛しい。
近づくと、彼女の香りがふわりと漂う。
「もっと近くに来て? うん、そう、そこ。
ねぇ……くりすのこと、ちゃんと見ててね? 目、そらしたら、怒るんだからね」
冗談めいた言葉なのに、その瞳は真剣だった。
ただ見つめ合うだけで、息が詰まるほどに距離が近い。
「こうしてるとね、なんだか落ち着く。でも同時に、ドキドキもするの。不思議だよね……」
少し照れながら笑う顔が、まるで春の陽だまりのようにやわらかい。
彼女が一歩近づくたび、世界がその笑顔だけで満たされていく気がした。
「今日はね、頑張りすぎちゃったから……少しくらい、甘えてもいい?」
小さくうなずくと、彼女はそっと髪を撫でられる位置に頭を寄せてくる。
「頭、撫でてほしいなぁ」
指を通すと、細い髪が指先にからまる。
その瞬間、彼女の唇から、かすかな息がこぼれた。
「そう、それ……♡ ん…気持ちいい。
くりす、撫でられるの好きなんだよ? 知ってた? えへへ♡」
その笑顔に、心の奥がほどけていく。
撫でるたび、彼女が少しずつ表情をゆるめていくのが愛おしくてたまらない。
「ほんとはね、こうやって甘えるの、ちょっと恥ずかしいんだ。でも……あなただから、できるの。
ほかの人には、絶対見せない顔なんだからね」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
信頼と恋しさが混ざり合った声だった。
その瞬間、彼女の小さな世界の中心に自分がいることを、確かに感じた。
「くりすの全部、あなただけのものだよ」
小さく囁く声。
「ねぇ……ぎゅってして?」
求められるままに彼女を抱き寄せ、腕の力を少し強める。
「……あ、強すぎ♡ でも、嬉しい♪ このまま時間、止まればいいのにね」
彼女の声が、胸の奥に響く。
頬が髪に触れ、ぬくもりが伝わるたびに、心臓が静かに跳ねた。
あったかくて、安心して、
まるで世界の音が遠のいていくような静けさの中。
この瞬間だけは、何もかもを忘れていた。
「 くりすが不安なときも、寂しいときもこうして抱きしめてほしい。」
見上げた瞳は、透きとおるような光を帯びていた。
こんなにまっすぐに誰かを見つめられる瞳を、他に知らなかった。
そして、彼女は微笑んで言った。
「世界で1番……だいすき♡」
その一言が夜の静寂を満たし、二人の時間は、もうしばらく止まったままだった。
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