【やきもち】あの子より、くりすの方がかわいいって言って
夜の部屋、照明は少し落とされて、ほんのりとした灯りがふたりを包んでいた。
「ねぇ……今日、楽しかった?」
顔を覗き込むようにして、彼女がそっと尋ねる。
その声には甘さがにじんでいて、一緒に過ごした時間が心から幸せだったことが伝わってきた。
「くりすは……ずっとあなたと一緒にいられて嬉しかったよ?」
ぽそっと言いながら、微笑みかける。
けれど──
「でもさ、ちょっとだけ……聞いてもいい?」
ふいに、彼女の声が少しだけトーンを変える。その瞳がすこし揺れていた。
「さっきさ……あの女の子の話、なんでそんなに楽しそうにしてたの?」
彼女の声には、ほんのかすかな不安と、かすれた寂しさが混じっていた。
少し間を置いて、彼女はぷいっと目線を外す。
「ううん、怒ってるわけじゃないよ?」
ふくれたような声が漏れる。
「ただ……なんか胸がキュッてして……
あなたの隣にいたのに、心はちょっと遠くにあるみたいで……寂しくなっちゃったの。」
そうつぶやいた彼女は、ソファの端に手を置きながら、視線を落とす。
「だって……あの子、かわいいし、あなた、笑ってたし……」
ほんの少し、言葉が詰まった。
「変かな、こんなことでやきもち焼くの。
でもね、くりす……あなたのことが大好きだから……独り占めしたくなっちゃうの。」
ぎゅっと手を握る仕草に、思いの強さが滲んでいた。
「あの子はただの友だちだよね。ちゃんと分かってるよ?信じてないわけじゃないの。」
「でも……心のどこかで『もしかしたら』って思っちゃうくりすが、ちょっとイヤだな……。」
その声は小さくて、まるで自分自身を責めるようだった。
それでも、ふいに彼女が顔を上げ、こちらの目をじっと見つめてくる。
「ねぇ……くりすだけ、見てて?今日くらいは、ちゃんと、くりすのこと『好き』って言って?」
「言葉にしてくれないと、不安になっちゃうんだよ……。」
かすかな涙を堪えるような目で、まっすぐに見つめてくる。
好きだよと伝えると、彼女の顔に微笑みが戻った。
「うれしい……ありがと……。」
「……でも、今日のごほうびはナシだな〜〜〜。あなた、くりすをちょっと泣かせたから、-10点!」
少しすねたような声に、彼女の柔らかさが戻る。
こちらの驚いた顔に、くすっと笑って、
「え? なんでそんなに慌ててるの?
ふふ、かわいい。」
そして、今度はそっと、優しく寄り添うような声で囁いた。
「あの子より、くりすのほうが……
かわいいって、思ってくれてる?」
「ちゃんと言って……聞かせて?
言葉にしてくれるの、すごく嬉しいんだよ……?」
彼女の声はまるでそよ風のように甘くて、心をそっと包んでくれる。
くりすの方がかわいいと伝えると、彼女は照れたようにニコッと笑った。
「もう……うれしいじゃん……。」
少し間が空き、くりすは静かに目を伏せてから口を開く。
「ごめんね、こんなにめんどくさい彼女で……。でも、やきもち焼いちゃうくらい、あなたのことが大切なの。」
「ねぇ……それって、悪いことじゃないよね?」
返事を待つ間もなく、彼女は微笑む。
「くりすね、あなたにだけは弱いとこ見せたいの。甘えて、やきもち焼いて……」
「全部ぜーんぶ、受け止めてくれたら、もっと好きになっちゃうよ?」
彼女の吐息が、胸にかかる。
「……あ、もう、今でも大好きなんだけどね。」
彼女は少しだけ頬を染めながら、上目遣いでこちらを見つめる。
「……ねぇ、ほんとはね」
「くりす、あなたのこと好きすぎて……どうしようもないくらい、頭の中ぜんぶあなたで埋まっちゃうの」
そう言って、恥ずかしそうに笑った。
「朝起きても、夜寝るときも……ふとした瞬間も、いつも考えちゃう。
だからね、ちょっとでも他の子の話が出ると……やきもちで胸がいっぱいになっちゃうんだ」
彼女はソファの端に座り直し、すぐに寄り添ってきて、腕に頬をすり寄せる。
「ねぇ……こんなふうにくっついててもいい? もっと、ぎゅーってしてもいい?」
答える前に、彼女はそっと抱きついてきた。
「えへへ……やっぱり落ち着く。あったかくて、安心するの」
最後に、彼女はそっと体を寄せて、優しく、とろけるように囁く。
「今日もそばにいてくれてありがとう。
明日も明後日も、ずっと、くりすの隣にいてね。あなたの全部が、大好きだから……。」
静かな夜、甘いやきもちとやさしい恋が、ふたりの距離をそっと近づけていた。
YouTube「桜雨くりすの甘恋日記」でこのお話のシチュエーションボイスを投稿しています。合わせてお楽しみください♪




