【おやすみ】手をつないで…眠る前の静かで優しい時間
夜も更け、部屋の灯りが柔らかく落ちる。
毛布を整える音と共に、そっと布団に入ってくる気配がした。
彼女は、少し照れたような声で言った。
「……ねぇ、ほんとにいいの? くりすが、ここで寝ちゃっても……?」
言葉のあとは、遠慮がちに身体を預ける気配。
布団の上に沈み込むような静かな音が、耳をくすぐる。
「ありがと……あなたの隣、あったかいね……お布団もふかふか……それに……あなたのにおいがして、ちょっとドキドキする……♡」
彼女がそう言ったとき、空気がふわりとあたたかくなった気がした。
彼女の声と体温が、ほんのりと布団の中に広がっていく。
シーツの擦れる音。彼女がくるまる仕草が伝わってくる。
「くりす、あなたの家、初めてだから……ちょっと緊張するかなって思ってたけど……すごく落ち着くの。」
まるで深呼吸するように、小さく笑う。
その笑顔を見た瞬間、部屋の静けさがやさしさに包まれた。
「今日、すごく眠たくて……本当は帰ろうと思ってたのに、あなたが『泊まっていけば?』って言ってくれて……嬉しかったんだ。」
ぽつりぽつりと心をほどくように話す彼女。
ほんの少し、間があって──優しい声が重なる。
「ありがとうね。こうやって、となりにいてくれて。」
布団越しに感じる温度が、ほんの少し近づく。
空気ごと距離が縮まってくるのを感じた。
「……ねぇ。手、つないでも、いい……?」
すぐに、彼女の指先がこちらに触れる。そっと握られる感触。
その手を優しく握り返す。
「ん……♡ あったか〜い……。なんだろ……このままずっと、手つないでいたいな……。」
その声が、ほんのりくすぐったい。
彼女の手は小さくて柔らかくて、指先まで気持ちが込められているようだった。
「あなたの手、くりすのよりちょっと大きくて、包まれてる感じするの。手だけなのに、こんなに安心するんだね……。」
そう言って、小さなくすっとした笑い声を漏らす彼女。
その笑顔がなんだか愛しくて、胸の奥まで温かくなった。
「ん……なんか……幸せすぎて、変な顔になってたらどうしよう……♡」
隣にあるその温もりと、言葉の一つひとつが、心の芯に染みていく。
「……ねぇ、寝る前って、ちょっとだけ素直になれる気がするんだ。」
「……ふだんは言えないこととか、今日のこととか……本当はもっと甘えたい気持ちとか……たくさんあるの。」
彼女の言葉は、まるで小さな灯のようで。
この暗がりの中で、まっすぐに胸に届いてきた。
「……くりす、最近ちょっとだけ寂しかったんだ。ひとりで寝る夜、やっぱりあなたのこと思い出すの。」
それは、心の底からこぼれ落ちた小さな寂しさだった。
「でもね、今は隣にあなたがいるから……このまま、ずっと一緒にいられたらいいのにって、そう思っちゃう。」
「ふたりだけの、静かで、優しい時間。世界でいちばん安心できる場所が、ここなんだもん。」
部屋の中は静かで、ただ彼女の声と気持ちだけが、ゆっくりと時間を埋めていく。
「……こういう時間、ずっと続けばいいのにね。なーんにも考えないで、一緒に、眠るだけ。くりす、それだけで幸せだよ。」
柔らかな声が、だんだんととろけていく。
「くりす、なんだかもう……ぽかぽかしてて……。まぶたが、ちょっと重くなってきちゃった……。」
呼吸がふわりと当たって、彼女のぬくもりがより身近に感じられる。
「あなたも、眠たくなってきた?ゆっくり、目を閉じて……。深く、深呼吸して……。だいじょうぶ、くりすがここにいるよ。」
そっと寄せられた額が、胸のあたりにやわらかく触れる。
まるで、すべてを委ねるように。
「……もうちょっとしたら、寝ちゃうかも……もし、くりすが先に寝ちゃったら……ちゃんと、となりにいてね。」
最後の言葉は、ほとんど夢の中にいるような優しさに満ちていた。
「今日、あなたの隣で眠れてよかった…………だいすき…………おやすみなさい。」
静かに──
彼女の寝息が始まり、部屋は穏やかな夜の静寂に包まれていった。
YouTube「桜雨くりすの甘恋日記」でこのお話のシチュエーションボイスを投稿しています。合わせてお楽しみください♪