第4章 魔王城への挑戦
勇者たちは長い冒険を経て、とうとう魔王ラグナ・ニーヴァスが潜む魔王城の前に立っていた。その巨大な建造物は黒雲に覆われ、不気味な光を放っている。
「ここが魔王城か……!」
カズマが剣を握りしめる。
「なんか想像以上に怖いね。」
アヤカが小さな声でつぶやく。
「ま、でも俺たちが今まで倒してきた奴らと同じだろ? 魔王だってただのボスキャラだよ!」
ショウタが無理に明るく振る舞うが、その声には少し震えが混じっていた。
城の正門を開けると、そこには意外な光景が待っていた。薄暗い廊下に案内板が掲げられている。
「ここでスリッパに履き替えてください」
「……は?」
三人は一瞬、動きを止めた。
「これって……なんで?」
アヤカが困惑しながら言う。
「罠かもしれないぞ!」
カズマが警戒を呼びかけるが、ショウタはさっさとスリッパに履き替えた。
「だって、これ無視したらなんか気持ち悪いだろ? 日本人としてさ。」
「そうだけど……。」
アヤカも渋々スリッパに履き替えた。
さらに廊下を進むと、今度は手洗い場が設置されており、そこにも看板が。
「手を洗い、備え付けの消毒剤で消毒してください」
「もしかして、魔王って……潔癖症?」
ショウタが冗談半分で言うが、カズマはますます警戒心を強めた。
「いや、こういう緩みが命取りだ。気を引き締めろ!」
三人は指示通りに手を洗いながら、先に進む覚悟を固める。そして次の扉を開けると――
勇者たちの目に飛び込んできたのは、無数の猫たち。戸棚の上で寝そべるキジトラ、廊下で戯れる三毛猫、そして豪華な絨毯の上で優雅に座るシャム猫たち。
「にゃあ〜」
「え、これ……猫カフェ?」
アヤカの目が輝き、彼女は思わず猫に駆け寄る。
「いやいや、待て! これは何かの罠だろう!」
カズマが止めようとするが、ショウタもすでに猫に夢中だ。
「この子、すごく人懐っこいな! お腹まで触らせてくれる!」
「……どうすんの、これ?」
困惑するカズマをよそに、猫たちに囲まれる二人。魔王城の雰囲気は一切なく、ただの猫天国だった。
さらに奥へ進もうとすると、巨大な扉の前に注意書きが掲げられていた。
「眷属をすべて倒さないと扉は開きません」
「眷属って……この猫たち?」
アヤカの顔が曇る。
「いやいや、猫を倒すなんてできるわけないでしょ!」
ショウタが即座に反論する。
三人は困り果てる。結局、猫たちを倒すどころか、その愛らしさに魅了され、遊び始めてしまう。
魔王ラグナは遠見の魔法でその光景を眺め、満足げにうなずいた。
「よし、計画通りだ。今回はこれで十分だな。」
彼の膝の上で寝そべる黒猫ノクティスが小さく鳴いた。
「にゃあ。」
「さて、しばらくは平和に暮らせそうだ。」