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第2章: 魔王、日本を知る

異世界「日本」――それは魔王ラグナにとって、未知の文化と技術が渦巻く謎の世界だった。


魔王城の一角、暗黒の祭壇に設置された水晶球が揺らめき、そこから魔力をまとった分体が送り込まれる。ラグナは遠見の魔法を通じて、日本と呼ばれる世界の光景を初めて目にした。


「なんだ、この奇妙な建物の群れは。これが人間界の文化か?」


高層ビルが立ち並ぶ都市の風景に、ラグナは驚きを隠せない。馬車の代わりに走る鉄の塊(車)や、夜空を照らす無数の光の点滅(街灯)が、彼の常識を次々に覆していく。


分体を街中に潜り込ませたラグナは、偶然にもゲームセンターという場所を見つけた。そこはネオンの光に包まれ、若者たちが熱心に遊ぶ異空間だった。


「これが……遊戯か?」


ラグナの分体は、モニターに映る「魔王討伐ゲーム」のプレイを目撃する。巨大な魔王が勇者たちに攻撃され、次々に倒されていく。プレイヤーたちは真剣な表情で画面に向かい、歓声を上げたり悔しがったりしていた。


「……なぜ、こんなにも私を倒すことに執念を燃やす?」


しかも、この世界の人間たちは魔法を一切使えないにもかかわらず、無数の敗北を繰り返しながらも勝利のために挑み続けている。それどころか、敗北すら楽しんでいるように見える。


「何度でも挑戦できる……これが、遊びだと?」


ラグナは思わず口元を押さえた。この世界の人間たちは、現実世界での経験を超越した膨大な戦術をゲームの中で磨き上げている。いわば、「勇者シミュレーション」を日常的にこなしているのだ。


「……こんな連中に勝てるわけがないな。」


現実で自分に挑む勇者たちは、この文化の申し子だということをラグナは理解した。その戦術や経験値、応用力の蓄積は、これまでのファンタジー世界の勇者とは次元が違う。


次にラグナは、ゲーム以外の日本文化を探ることにした。飲食店で料理を注文する分体や、満員電車に押し込まれる分体の姿が、水晶球越しに映し出される。


「食べ物は美味だが……この世界、忙しなさすぎないか?」


ラグナは少し引き気味だった。だが、どこか滑稽な部分も多く、興味を引かれる。中でも猫カフェという場所に足を踏み入れた分体が映し出す光景には、思わず笑みを浮かべる。


「……なるほど。これは癒しというやつか。」


無数の猫が、来客の膝に乗ったり、床でゴロゴロ転がったりしている。その光景を見たラグナは、ふと思いつく。


「これだ。これなら、勇者たちを無力化できるかもしれない。」


魔王城を「猫カフェ」にするというアイデアは、この瞬間に生まれた。勇者たちの力は恐ろしいが、「倒す」必要はない。むしろ彼らが戦う意志を失えば、それで十分なのだ。


「まずは準備だな。猫たちを招き、城内を改装しよう。」


ラグナは、日本から得た知識をもとに新たな計画を練り始める。そしてその足元には、黒猫ノクティスがいつものように怠惰な顔を浮かべて寝そべっていた。


「ふん……主も変わった趣向を思いついたものです。」


魔王ラグナは、この新しい戦術に自信を深めながら、次なる準備に取り掛かる。勇者たちが猫カフェ化された魔王城でどう反応するか――それを楽しみにしながら。

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