表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎のマッチングアプリ【マッチングゥ】から始まる彼女探し〜恋愛経験値0の俺は指示に従うだけです! ほんと彼女できんのっ!?〜  作者: おみくじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/14

ハンバーグぅーーーー

 俺のところへ力強い足取りで向かってくる令和ギャル、甘野美結あまのみゆ


 ザッ。


 っと地面を踏みしめ、俺と対面する美結ちゃん。イライラ度がMAXなのか、表情がとてもいかつく、目元ぱっちりメイクの睨みはすごく怖い! 身長150センチと小柄なのに強キャラオーラが半端ない。Hunter◯Hunterならビス◯ット=クルーガークラス。今からムキムキに変身するの?


 美結ちゃんが両手を腰に当て、つつましい胸を張った。


「ほんとッ、意味分かんないッ」

「えっ??」

「えっ?? じゃないでしょッ!!」

「す、すいません!! そ、その、ハンバーグって分かんないですよねっ!」

「はあっ!? ハンバーグは分かるし!! すっごく美味しいし!! バカにしてんの!?」

「えぇっ〜!?」


 俺も意味が分からない!!


「叫ぶのが意味分かんないって言ってんの!! キモぼっち!!」


 いやいやそう言ったつもりだけど!? 察してくれよ! 怒るの理不尽!! あとキモぼっちとか言うな!!


「説明してッ!」


 美結ちゃんと目と目が合った瞬間、全てを理解した。納得いくハンバーグ説明ができなければ、ゲームオーバーだと。なんだよハンバーグ説明って。ギャグです、って言いたいが美結ちゃんは絶対納得しない。何でこういうときにマッチングゥから連絡がないんだよ!!


「何にも言わないわけッ?」


 美結ちゃんが棘のある声音で腕組みをしながら睨んでくる。俺はテンパりながらも必死に考える。


 ハンバーグ………、ハンバーグ! 何か言えること! 何か………、あっ!


「お、お弁当!」


 つい口から出た一言に、美結ちゃんが怪訝そうに小首をかしげる。


「お弁当が、なにッ?」

「あっ、いや、その!?」


 俺はどもりながらも続けた。


「お、俺が持ってきたお弁当、今日ハンバーグなんだよ!」


 美結ちゃんのこめかみがぴくっと動いた。や、やばいやばい! 他に何か言わないと!?


「お、俺のお母さんさ、ハ、ハンバーグが得意料理で! きょ、今日の朝ご飯でも置いてあって、う、美味かったんだよ!」

「…………」

「そ、その! 俺のお父さんもハンバーグが好きで! か、母さんとデートのときはご飯屋さんでハンバーグばっか選んで怒られたこともあってさ!」

「………」

「お、俺の母さん! ハンバーグに恨みを持ってたくらいで!!」

「………、っ」


 美結ちゃんの小さな口から声が漏れた。お、怒られる!? な、なんとか挽回しないと!?


「で、でもハンバーグ食べてる父さんってすっごく幸せそうでさ! 俺の母さんが手作りしてあげよっかなって思ったくらいで! それでハンバーグ作り上手くなって、今じゃ一番の得意料理! ハンバーグも許してあげてるって。 ほんとハンバーグが理不尽で可哀想だよな、あははははっ………!」


 しーん………………。


 一気に話続けた。もう、頭の中は空っぽ。春風が木の葉を揺らす穏やかな音だけがあたりに響いていた。


「………………」


 美結ちゃんは真顔のまま、俺を見つめていた。今何を思っているのか、俺には分からない。


「………、ふっ」


 小さな口から、柔らかな声音が聞こえた。


 ふっ? そして、


「ふふっ、あははははっ!」


 美結ちゃんが、笑った。可笑しく目元を緩めていた。俺はただ呆気にとられ、その愛らしい表情を見つめていた。


 美結ちゃんが、目元を指で少し拭う仕草をして、


「ほんと、意味分かんない」


 その言葉に棘はなかった。楽しそうに弾んでいる声。


 俺は可愛い雰囲気にドキドキしながらも、口を開く。


「そ、そうかな」

「うん。ハンバーグでそんな家族の話聞いたことないもん。それでなに? お母さんと超仲良いじゃん、お父さんとのデート話を知ってるとかウケる」


 美結ちゃんはまた楽しげに笑う。素直そうな笑みに、悪い気はしなかった。俺は苦笑しながら、


「今日の朝に聞かされてさ、俺も反応に困った」

「なにそれ、あははっ! 朝から恋バナ聞かされてんの?」

「まあ、そうなる………、あはは、だから朝飯食うのに集中してーーーー」


 ぐぐーーーー。


 やべ! 今俺のお腹が鳴っ、


 ぐぐーーーー。


「つっ!?」


 美結ちゃんが慌ててお腹を抱えた。今度は、どうやらお互いに。美結ちゃんが、また頬を赤らめ目線を外した。や、やばっ!? また俺怒られる!!


 俺は咄嗟に、


「わ、悪い! 俺お腹空いてたから!!」

「えっ!?」


 美結ちゃんが驚きながらこっちを見つめる。チャンスだと思った、一気に謝り続ける。


「そ、そのハンバーグの話してたら、もうが、我慢できなくて。お、お腹の音鳴った。ご、ごめん」

 

 美結ちゃんが、気まづそうに言う。


「べ、別に良いよ、お昼まだなんだし」


 私も、空いてるし。


 と、小さく誰に言うでもなく呟いた。


 ………、そういや、購買で買うものないって、言ってたな。


 俺はスマホをポケットにしまい、木の下に置きっぱなしの弁当を取った。


「あ、あのさ」

「な、なに?」

「良かったら、ハンバーグ食べるか?」

「えっ??」


 美結ちゃんの瞳が丸く見開く。俺は、頬を掻きながら、


「ま、まだ手をつけてないから、さ。よ、良かったらだけど」


 俺はお弁当を開ける。


 白ごはんと、おかずは小ぶりのハンバーグ3個に、卵焼き、ミニトマト、あと、ほうれん草の胡麻和えかな、どれも見栄えよく、美味しそう、特にハンバーグ。


「わあっ!! 超美味しそう!! あっ、で、でも、い、良いの??」

「お、おう」


 俺は迷いが出ないうちに、お箸(もちろん未使用!)を渡す。


 美結ちゃんの細い指が、お箸を持つ。


「あ、ありがとう」


 そう言って、美結ちゃんはハンバーグをお箸で挟んだ。そのまま、上目遣いで、伺うように俺を見つめる。じょ、女子力高すぎる、可愛すぎて直視できん! 


 俺はゆっくり大きく頷くだけで精一杯だった。でも、美結ちゃんには伝わったらしい、嬉しそうに微笑んだ。か、可愛すぎるから控えて!


 小ぶりのハンバーグが、小さな口に入った、その瞬間、


「んんんんんんーー!! 超美味しい!!」


 美結ちゃんは、とても幸せそうで。見てるこっちまで、同じ気持ちになる。


 美結ちゃんはふた口で食べ終え、


「ほんと美味しすぎ! お店出せるレベルじゃない??」

「そ、そうか」


 良い過ぎな気もするが、ま、ありがたく受け止めておこう。


「ほんとお母さんの得意料理なんだねっ、ふふっ」


 美結ちゃんは楽しげに言いながら、ハンバーグを見つめる。俺は、気持ちを汲む。


「も、もう一個、良いぞ」

「えっ! あっ、で、でも」


 ためらう美結ちゃんに、俺は自分のぽっちゃり体型を指さした。


「お、俺、ダイエットしなきゃだし」


 そう聞いて、美結ちゃんは、興味深げに俺を見つめた。そして、


「ぷふっ!! あははっ!! まじウケる!! あっ、ごめん! えっと、その、ふふふっ」


 悪気はないんだ、特に問題なし。むしろ、狙い通りになって良かった。


 俺は目で、ハンバーグを薦める。美結ちゃんは、嬉しそうにもう一個、お箸で掴んだ。そして、今度は一口。


「んんんんん!! おーいしっ♡」


 出ました、今日一番の良い笑顔。女子って、怖くない、のかも知れない。今このとき限定だけど。


 美結ちゃんは、ハンバーグを飲み込むと、


「ごちそうさま。すんごく美味しかった」

「そ、そっか。そりゃ良かった」


 お箸を返してもらい、お互い、そのまま目を合わせたままだった。美結ちゃんはとても自然に微笑んでいて。俺はドキドキがずっと止まらない。


「ねぇ」


 美結ちゃんはニッと笑いながら、


「名前、なんて言うの??」

「えっ? な、名前?」

「そう、ぼっちの」


 ぼ、ぼっちって言うなっての。お、俺の名前は………、


「あ、青木あおき春助しゅんすけ


 甘野美結ちゃんが嬉しそう目を細めた。


「そっか。ありがと、うーん、しゅんくんでっ」

「えっ!? しゅ、しゅんくん?」

「そっ。あっ、私のことは、みゆちゃんで良いから」


 そう言って、


「お返しはちゃんとするからねっ。しゅんくんはお昼休み、だいだいここにいる感じ?」

「えっ!? あ、ああ、だいだいは」

「ふふっ、そっか。じゃあ、またねっ」


 甘野美結ちゃんは小さく手を振り、背を向け、小走りでかけていく。


 俺は、その華奢な後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。


 ブブブブブッ。


 ポケットのスマホが震えた。


 そっと取り出し画面を見つめると、


『お相手を更新しました!』


名前=甘野美結あまのみゆ

性別=女性

年齢=17歳

身分=高校生。令和ギャル。

身長=150センチ

体型=スリム

好きなもの=グルメ、ハンバーグ


 ははっ、ハンバーグ追加、お後がよろしいようで?


 ググーーーーーー。


 俺のお腹がまた大きく鳴いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ