罪と罪と、救い
俺の目の前で睨みを効かせ立ちはだかる、令和ギャルこと、甘野美結。
俺は、手にぎゅっと握りしめているスマホに目を向ける。
マッチングゥのお相手
名前=甘野美結
性別=女性
年齢=17歳
身分=高校生。令和ギャル。
身長=150センチ
体型=スリム
好きなもの=グルメ
なんで登録されてんだ!? 陰キャの俺とは絶対に不釣り合いだろ!
「スマホ見るのマジなくないッ?」
「つっ!?」
冷めた声に、思わず俺の体がビクつく。そっと顔を上げると、甘野美結はイライラした目で睨みつけてきた。今日で2回目だ、女子にきつい目つきで見られんの。あれなの? 女子は男子としゃべる時自然とそうなんの?
「なにッ?」
と、強い口調で俺に問う美結ちゃん。ど、どうしよう。
「なにその言い返したい顔」
「うっ………!?」
「何がうっ! よ。言えばいいじゃん」
そうしたいっつうの! でも言ったら、
「怒る、とか思ってんでしょ、どうせ」
美結ちゃんは呆れた様子で俺を見つめる。そして、
「もちろんそうだけど」
「ダメじゃん!?」
思わず突っ込んでしまった。この流れだと普通は怒らないとかじゃないの!?
「ダメに決まってんでしょ。私が告られたとこ隠れて見てたんだから」
「い、いやそれは、わざとじゃなくて」
「ウソつき。それならなんで隠れている木から顔のそがせたのッ」
「そ、それは、ちょっと気になって」
「それで私と目があったじゃん? 慌ててまた隠れてさッ、ほんと最低、キモッ、ぼっち飯」
「最後のは関係なくないか!?」
って、俺何言ってんだ! どの悪口もだめだろ!!
「はあっ? 関係あるし。私がお昼ご飯まだなのに、先に食べられたらすごいムカつく」
「なにその言いがかり!?」
美結ちゃんは苛立った様子で、
「ほんとなら今頃、売店でお昼買ってんの。んで教室で食べてるの、友達と楽しくしゃべっててさッ」
「あ、は、はい」
「今日なんか特にお腹空いてんの! 朝から何も食べてないし!」
「ほ、ほう」
「そしたらあの橋本がお昼に呼び出しとか、まじありえなくないッ!?」
「ひっ!? いや、あ、あの、橋本くんは事情を知らないわけで」
「はあっ!? お昼休みは、ご飯食べる時間でしょ!」
「そ、そうですね! そうです! その通り!」
ごめんよ橋本くん! かばってあげられなかった! 君のことは全然知らないけど、その、君が全面的に悪いということで!
美結ちゃんは腹立たしげに続ける。
「もう売店で食べたいやつないかもだし!」
「いや、あの、何か食べるものはまだあるのでは」
「食べたい好きなものなかったら意味ないでしょ!!」
「ひっ!? いや、そ、そう言われても」
「ほんとッ、これだから無神経な男子はッーーー」
ぐぐーーーーーーーーっ!
腹立たし気な美結ちゃんの怒声がピタリと止まった。両手でお腹を抱えながら。
急に静かになる、春の陽気に包まれた中庭の隅。
………、ぐぐっー。
「つっ!?!?」
美結ちゃんがさらにお腹を抱えながら体をきゅうくつそうに曲げる。顔は俯き、頬はあからんでいく。こ、これって、
「あ、あの美結、さん?」
ギロリ。
ゴクリ。
狩るものの目だった。俺は獲物。食われんのか。ってあほか! 違う違う! これは美結ちゃんのお腹の音を聞いしまい、すごく怒ってることだってばよ!
華奢な体が小刻みに震えている。恥ずかしさなのか、怒りなのか、はたまた、両方か。って、そんなことより、また俺の罪が増えてねっ!? た、確かに女子のお腹空いた音を聞くのは罪悪感がある! で、でも、これも不可抗力だろ!
だが、今の激おこ美結ちゃんに、そんなの通じるわけがない! ど、どうすれば良いんだってばよ!?
ブブブブブ!
な、なんだよ!! こんなときに!!
震えたスマホを思わず見てしまった、そこには、
なっ!?!?
救い? となるのか分からないメッセージが送られてきた。




