マッチングゥ! 3人目
「ここでなにやってんの、かなぁッ??」
いかにも男子ウケ、しそうにない棘のまじった声だった。
目は鋭くて威圧的。口元はうっすら笑っているのだけど、怖い。
「聞いてんだけど?」
美結ちゃんが問い詰めてくる。俺の心臓はドキドキしっぱなしだ。告白した橋本くんも、こんな気持ちだったのか、いやぜってぇ違う。
「ほんと、陰キャって感じ」
な、なんだと。
自分で自覚してることを誰かに言われるのは妙に腹が立つ。だけど反論はしない、なぜかって? 怖いから、美結ちゃんが。
「てかぼっち飯初めてみたんだけど。超ウケる」
と、美結ちゃんは、はん、と嘲笑う。べ、別に良いだろが、昼飯を1人で食っても!
「ああん? なんか文句あんのッ?」
やべっ!? 顔に出てた!?
「あっ、い、いや、べ、別に」
「ぷふっ! めっちゃきょどってるし、ウケる」
美結ちゃんの両頬には小さなえくぼができた。ちょっと可愛いと思った自分を殴りたい。
少し笑った美結ちゃんだが、そのあとすぐ真顔になった。サラリと淡い桜色の髪を手ですき、俺を冷たい目で見つめる。な、なんでしょうか?
「どうしよっかなぁ〜」
「えっ?」
俺の自然と出た問いに、美結ちゃんは苛立った顔をした。いやだから怖い。
「告白見られちゃったし? なんか償いしてもらわないとダメでしょ?」
いやいや!? 何それ!? 俺悪い事してないよねっ!? 勝手にそっちが俺の聖域に侵入してきて、アオハルなことして、無理やり見せられたもんだろ!?
俺が何も言えずにいると、
「ふふ〜ん、まっ、何にもしてくれないならそれでいいけど。そんかわりあんたのこと友達に話して気分スッキリするから」
と、美結ちゃんは意地悪げに微笑む。
美結ちゃんという初めて会った女子。友達関係は知るよしもないが、スクールカースト上位の奴らがいっぱいいることはすぐに想像できた。もしそんな奴らに俺の事話されでもしたら………。
俺のこれからの高校での生活、立ち位置、身分がかなり危なくなる。
美結ちゃんの微笑が、悪役令嬢のよう。俺は平民、いや下民だ。
「さぁ、どうしてくれるのかなぁ??」
美結ちゃんの目がいっそう細くなる。俺は蛇に睨まれた蛙のようで。動けない、頭が真っ白。もう、無駄に喉を鳴らすことしか出来、
ピコン!
「はうっ!?」
鳴った、盛大な音が。マナーモードにしてたはずなのに。
「な。なにっ?」
美結ちゃんが少し驚く中、
ピコン!
と、俺のスマホは鳴り響く。こ、こんなときに鳴るなよ!!
俺は反射的に、制服のポケットにしまっていたスマホを取り出していた。画面には、
『マッチングゥしました!』
は、はああああ!?
慌ててタップした。そしたら、
『マッチングゥのお相手
名前=甘野美結
性別=女性
年齢=17歳
身分=高校生。令和ギャル。
身長=150センチ
体型=スリム
好きなもの=グルメ
「なんでだよっ!!」
「わわっ!?」
俺の大声に、甘野美結こと、同級生の美結ちゃんが驚く。でも、すぐ立て直し、キッと俺を睨んだ。
「なんなのよ、急に!!」
「いいっ!?」
美結ちゃんが僕とマッチングゥ! したんだ、とは絶対に言えない。
言えない事情を抱えたまま、俺は美結ちゃんに睨まれながら、スマホをぎゅっと握りしめていた。




