危機100%
『良かったら、僕と付き合わない?』
中庭での昼休み。木漏れ日が優しく降り注ぐ大きな木の下で、俺はドキドキしていた。告白したわけでもないのに。てか、
なにさらっと、告白しとんねん!!
関西人ではないのに、俺は心の中でそう叫んでいた。
「は、橋本くん」
遠慮がちな、愛らしいささやき声が鼓膜をくすぐる。や、やべぇ! か、可愛い! 緊張して手汗が!?
俺こと青木の名前が呼ばれたわけでもないのに。
1人中庭の木の下でゆっくり過ごすつもりだったのになんでこうなんの!? 今すぐにでもこの場から離れたいんですけど!?
でもそんなチャンスは絶対ない。バレないよう大人しくしてるしか、
「急に告っちゃってごめんねっ、驚いちゃった?」と、橋本という男子が軽い口調で、美結という女子を和ませにいく。なんでそんな爽やかな返しできんだよ、息キレイになる系のガムとか噛むとそうなれるの?
「あははっ、うん、すっごく驚きましたっ」
美結という女子が小さく笑いながら応える。こっちもこっちでイケてる女子感ハンパねぇ。
「返事はどうかな」
「え、えっと」
そして、静寂が包む。なんとも言えんアオハル的な空気感。や、やめろ! 体がぞわぞわする!!
「あ、あのねっ!」
美結という女子が慌てて話し出した。
「橋本くんは、すごく良い人。クラス違うくて、まだ少ししか話したことないけど、今みたいにすごくしゃべりやすくて。だから、私も話してて楽しいし」
うん、と橋本(イケメン仮)が頷く。そのあとも美結(女子力高い)が続ける。
「で、でもね、わ、私、す、好きな人がいるのっ!!」
振られたあぁぁぁぁぁぁ!!!! うしっ!!
俺の気分は高揚していた、最低なくらい。さて、橋本(イケメン笑)は、
「そっかぁ、それは残念」
と、あっさり、くすっ、とこれまた自然な爽やか声で返す。おいおい、まじかよ、俺だったら、両膝を地に着いて崩れ落ちている。
「ほんと、ごめんねっ。すごく嬉しいんだよっ、でも、その………」
「あっ、うん。大丈夫だよ、ありがとう心配してくれて」
は、橋本(泣)! お前人が良すぎん? 俺なら、惨めさで涙目になってる。
「でもさ、美結ちゃん」
「うん?」
「もし好きな人への気持ちが変わったら、俺の告白また思い出したよ、いつでも待ってるから」
な、なに!?
メンタル強! てかイケメンタル!! 俺の感情がクズすぎてなんか、泣きそうです。
「ふふっ、うんそうする」
「ありがと、あっ、でもそのとき僕が誰かと付き合ってたら、今度は僕からごめんっていうかもねっ」
と、橋本は茶化すように小さく笑い声こぼした。そして、互いの笑い声が優しく重なり合う。な、なんてコミュ力。ほんと、イケメン、イケ女子は恐い。
ゴクリ、と俺が喉を鳴らしたと同時に、
「じゃあ、僕先に戻るよ、昼休みにありがとね」
「あっ、うん」
遠ざかる足音が聞こえ、どんどん小さくなって、消えた。
静寂、ホッとする。とんだアオハルもんだった………。
「はぁー、疲れた」
いいっ!?
苛立った声音。だ、誰!? いや、これって、
「昼休みによびだすなよなぁー、ほんと」
さっきまで可愛い女子力半端なかった、
「こっちはお腹空いてんだよ、朝食べずにさー」
美結ちゃんの声じゃん!?
あまりの変わりようだった。こわっ!? なにこのホラー感!?
俺の心臓がバクバクと鳴る。こ、声をあげるな! 息を小さく! だ、大丈夫! 隠れてるんだから見つからない! 見つからない! 見つからない! み、
「見つからないって思ってたんでしょ」
「ひっ!?」
冷たい声音に、座り込んでいた体が硬直する。
「ねぇ、そこの男子、こっち、向けッ」
もう思考は、真っ白。ガチガチの首をなんとか声のする方へ向けて、顔を恐る恐る上げた。そこには、
「ここでなにやってんの、かなぁッ??」
美結ちゃんという女子に、すっごく軽蔑の眼差しを向けられる。すんごく冷たい笑みとともに!!
あ、あはは、はは。
声にならない心の声をだしながら、俺は喉を鳴らすしかなかった。




