表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あめつちのシズク  作者: 相田リキ
少年期
22/33

22.トマスさんからの手紙

「父ちゃん。父ちゃん宛てに手紙が来てるよ」


 いつものように天の軍にかこつけて、ニノと訓練してきたその帰りの事。

家に玄関のドアに、父ちゃん宛の手紙が挟んであった。


「トマスさんからか」


 手紙の差出人は、鍛冶屋のトマスさんみたいだ。

父ちゃんが矢じりを依頼することはあるけど、いったい何の用だろう。


「あら珍しいわね。なんて?」


「なんでも月の鉱石が不足しているらしい。その採掘の依頼だな」


「なんで鉱石を掘ってくる依頼? 父ちゃんは狩人でしょ?」


 鉱夫でもない父ちゃんに鉱石を掘ってこいだなんて、トマスさん手紙を出す相手を間違えたのかな。トマスさんはそろそろ息子に仕事を継がせたいとか言ってたし、ちょっと歳で判断力が落ちてるのかもしれない。


「うーん、そうだな。シズクも知っておいた方がいいかもしれないな」


 オレの分のミルクをテーブルに用意すると、父ちゃんは深々と椅子に座る。

あ、父ちゃんのこの座り方……これ、絶対話が長くなるやつだ。

母ちゃんもそれが分かったのか、晩ごはんの仕込みに台所へ避難してしまった。


「魔獣であるルナスグリズリーは、咆哮で衝撃波を放つのは知ってるな?」


「うん」


 吠え声と同時に三日月型の衝撃波を出す、って父ちゃんが前に話してたやつだ。それがどうしたんだろ?


「実はアレ、ヤツの体内で作られる鉱石があって初めて出せるんだ」


「なら、ルナスグリズリーのお腹からその石を?」


 なるほど、ルナスグリズリーを狩るのなら、確かに狩人の父ちゃんが適役だ。

トマスさんが父ちゃんを頼って依頼してきたのもわかる。

歳で判断力が落ちてるとか考えちゃってホントごめん。


「いや、ルナスグリズリーの体内鉱石は大抵小さいし、狩ってもあんまり意味がない。まあ、他の素材はいい値で売れるんだが」


「え、そうなんだ。じゃあどうするの? 沢山狩るとか?」


「ははは。いくら父ちゃんでもヤツを何匹も相手にしては、命がいくつあても足りないぞ。一匹でも傭兵や騎士ですら、複数人で相手するんだからな」


 熟練の狩人である父ちゃんでもそうなのか。

単に衝撃波を出す熊だと思ってたのに、ルナスグリズリーって強いんだな。

実物は見たことない想像もつかないけど、今のオレじゃ全くかなわなさそうだ。


「ルナスグリズリーは体内の鉱石が大きくなりすぎると、定期的にそれを吐き出すんだ。それを狙う」


「うわ……なんか汚いね」


「汚……うん、まあそういうもんなんだ。問題は鉱石を運ぶ人員を雇うかどうかだ。量は無いから一人でいいんだが、トマスさんの方からは出せないみたいでな」


 荷運び役……。量は無いって言ってるし、もしかしたらオレでも出来るのかな?


「はいはい、飲み物だけじゃ口寂しいでしょ」


「お、いいな蛮族イチゴか。シズクも好きに食べろよ」


 母ちゃんが食べ物を用意してくれたようだけど、オレはそれどころじゃない。

父ちゃんが言ってた荷運び役をどうするのかが、気になってしょうがない。

でも父ちゃんがモリモリと食べ始めたせいで、結局話は途中で終わってしまった。





 晩ごはんも風呂もとっくに終わって、オレ達子供は寝る時間になる。

眠たそうに目をこしこししてる妹のパジャマのボタンをとめて、着替えは完了だ。

寝る準備が出来たミリカとふたり、子供部屋のベッドに横になった。


「にいちゃおやすみ~」


「うん、おやすみミリカ」


 おやすみのあいさつも終わったばかりだというのに、ミリカを見ればもうスヤスヤと寝息を立て始めていた。


「荷運び人か……」


 オレは真っ暗な天井を見つめながら、さっきの父ちゃんの話のことを考える。


「ん? まだ起きてたのかシズク」


 しばらくそうしていたら、オレたちの様子を見に来たのか、明かりを持った父ちゃんが部屋に入って来た。ランプの光に照らされた父ちゃんの顔は軽くホラーだったけど、オレはさっきまで考えていた事を思い切って聞いてみる。


「父ちゃん。荷運び役ってオレにも出来ないかな」


「どうしてまだ起きていると思ったら、そんなことを考えてたのか」


 父ちゃんは少し考えこんだ後にため息をついた。

やっぱり子供のオレじゃダメなのかな……そう思っていたオレの頭に、ポンと父ちゃんのゴツゴツして大きくて手がのせられる。


「仕方のない息子だ。父ちゃんの言う事は、絶対に守ると約束できるか」


「っ! できる!」


「あっ、しーっ! しーだぞシズク。ミリカが起きちまう」


 しまった、嬉しさのあまりつい大声が出てしまった。

オレは両手で口を塞ぎながら、音を立てないようにコクコクとうなづいく。

父ちゃんがあわててミリカの方を見たけど、わが家の小さな天使は相変わらず夢の中だった。





「あなた、本当に大丈夫なの?」


「俺の長年の経験を信じろ。シズクを危険な目に合わせはしないさ」


「父ちゃん早く早くー!」


 次の日の早朝。

本来なら今は素振りを始める時間だけど、今日は別だ。

大き目のリュックを背負って準備も整っているオレは、向こうで母ちゃんと話している父ちゃんを急かす。楽しみすぎてあんまり眠れなかったけど、元気はあり余ってるぐらいだ。


「シズク! 約束!」


「父ちゃんの言うことは絶対に守る!」


「よし! 一の山へ、月の鉱石を掘りに出発だ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ