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あめつちのシズク  作者: 相田リキ
少年期
16/33

16.戦いの後

 目を覚ますと、目の前にあったのはどアップになったミリカの顔だった。


「かあちゃ~! にいちゃがおきた~!」


 ミリカの大きな声を聞いた母ちゃんと父ちゃんが、バタバタとあわてた様子で駆けよって来る。


「シズク! 大丈夫かい?」


「起きなくていいぞ、体が痛むだろう?」


「体が……痛む?」


 心配そうに声をかけてくる父ちゃんと母ちゃん。

ふたりにかけられた言葉の意味を考えて、オレは自分の状態をようやく自覚する。


「つっ……」


 腹の痛みだ。

途端にズキズキと、腹のあたりから鈍い痛みが襲ってくる。

気を抜くと吐いてしまいそうだ。痛みに耐えるためシーツを握りしめる。

……シーツ? もしかして、ここは医務室でオレはベッドの上なのか?

オレはどうしてここにいるんだっけ……。


「シズクが目を覚ましたって本当っ!?」


「お嬢様、そんなに走っては傷に響きますよ」


「それよりシズクよ! 立ったまま気絶したって聞いた時は驚いたわよ!」


 医務室に飛び込んで来たニノが、入って早々にまくし立てる。

その後ろから歩いてきたコリエルさんは、ニノを強引に椅子へすわらせた後、オレの方へ眼を向けた。そしてオレが目を覚ましているのを見ると、ぺこりと頭を下げた。


「ニノちゃいたそ~」


「大丈夫かいニノちゃん?」


「お嬢様の手当はもう済んでいますので」


 手当がすんだらしいニノは、それでもあちこちボロボロだ。


「こんなのつば付けとけば治るわよ」


「付けたのは薬でございますけどね」


 どうやらオレはねーちゃんの技を受けたあの後、立ったまま気絶したらしい。

全身に感じるダルさの中、ズキズキと痛む腹をなでさする。


「ああ……負けたのか」


 痛みで自分が何をされて、どうして気を失ってしまったか思い出した。

発頚、って言ってたっけ。ねーちゃんの圧倒的なまでの威力を持ったあの技。


「ハハ、あれは……腹が無くなるかと思ったなあ」


「シズク……」


 明るく振舞おうとしたけど、上手く笑いを作れ無い。


「……ちくしょう」


 目の奥がじわり熱くなって、オレの頬を涙が次々と流れてく。

元々ねーちゃんみたいな強い大人相手に、本気で勝てるとは思ってなかった。

訓練の成果が出せれば、それでいいと。

けど……。


「くやしいなあ」


「に、にいちゃがないちゃったら、ミリカまでかなしくなるよぉ……」


 ミリカが目に涙をためて、今にも泣き出しそうなほどに顔をゆがめてる。

お前まで泣かなくていいんだぞ、そう言いかけた時……。


「うわ~~ん! うわ~~~~~ん!」


 それまで静かだったニノが、大粒の涙を流しながら声を上げた。


「う……ぐす……え~~~~~ん!」


 その声を聞いたミリカが、ついにこらえきれずに泣き出す。


「うっ……うっ……」


「うわ~~ん! うわ~~~~~ん!」


「え~~ん! え~~~~~ん!」


 三人の子供の泣く声が医務室に響く。


「あらあら、三人して……」


「このまま泣かせてあげましょう。その方がきっと……」


「だな。悔し涙は流した数だけ子供を成長させてくれるもんだ」


 泣ているミリカを連れて、父ちゃんたちは医務室からそっと出ていった。

オレはまだくやしさで涙が収まりそうに無くて、嗚咽の出るままに任せていた。



「おヤ、このエイファ相手に堂々と最後まで立っていた立派な戦士が、なに泣いてるネ」


 だけどその嗚咽を止めさせたのは、オレを負かした異国の戦士であるエイファ本人だった。

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