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あめつちのシズク  作者: 相田リキ
少年期
14/33

14.VSエイファ

「ニノの様子も見に行きたいけど、時間がな……」


「これより勝ち残った戦士による二回戦が始まります! 該当の戦士達は、武舞台へ!」


 なぜなら一回戦が終わったばかっりなのに、もう二回戦が始まろうとしているからだ。そして出場者の数も半分に減ったことで、試合の回転も速くなっている。

オレの試合もこの次だし、医務室に行ってる間に出番が来るかもしれない。


「それでは二回戦第一試合始めっ!」


「なんやスカした兄ちゃんやな、ワイの棍棒で綺麗な顔をボコボコにしたるわ!」


「フン……」


 一回戦目の大男相手では、いまいち訓練の成果がわからなかったし……。

だけどここからは違う。勝ち上がった出場者は、おそらく全員強い人たちだろう。

正直そんな中でオレが勝ち残ることは難しいと思う。大人相手に今の力でどこまでやれるのか……胸を借りるつもりで挑もう。


「それまで! 勝者グランツ!」


「……えっ、もう!?」


 あれこれ考えてたこの短い間に、もう勝負が決まってしまったらしい。

武舞台に目を向ければ、傭兵らしい短髪の男の人がちょうど待機場所に戻るところだった


「口だけじゃねーかバングー!」


「や、やかましわ……て、手加減してやったんや」


 ボコボコにされた顔のまま、負け惜しみを言ってるのはバングという男の人だ。

ワイの美顔が……などとつぶやきつつ、そのまま医務室に運ばれて行った。

傭兵らしきグランツという男の人は、オレが予想したよりも相当に強いらしい。


「次の戦士、武舞台へ!」


「危なかったなー……ニノの様子を見に行ってたら、不戦敗になるとこだったぞ」


 さあ、今度はオレの試合だ。思ったよりもかなり早いけど、準備は出来てる。

さっき使った小剣の具合も確かめてあるし、意気ごみ十分に武舞台へ駆け上がる。


「お? エイファの相手は随分可愛い少年ネ」


 オレにそんな声をかけてきたのは、やけに長い袖の服を着た女の人だ。

ダークレッドの髪を両耳の上の方でちっちゃく輪っかして、そこから細長く垂らしている。歳はラブ先生と同じくらいのこの人が、オレの試合相手か……。纏う雰囲気は明るいものなのに、気を緩めたらダメだと頭のどこかが声を上げていた。


「お手柔らかにニ……っテ、ホントにお手手柔らかそうネ」


「ん!」


 侮られた気がしてちょっとムッとしてしまったオレは、エイファと言うねーちゃんに向かって手のひらを突き出す。これでもオレなりに訓練はして、まめだって何度もつぶしてるんだ。


「これは失礼だったヨ……ちっちゃくても立派に戦士の手だネ」


「ねーちゃんは手が見えないけどな」


「女の子の肌は、そう簡単に見せるものではないヨ」


 ねーちゃんは手まで覆う袖をヒラヒラさせて、冗談まじりにそんな事を言う。

あんな長い袖だと、ただ戦いにくいだけだと思うんだけど、何かあるのかな。

とにかく油断だけはしないぞ。


「ちっこいボウズがんばれー!」


「エイファちゃん異国風でかわいいぞー!」


「それでは二回戦第二試合始めっ!」


 試合の合図が聞こえると、ねーちゃんはオレに向かってゆっくりと歩いて近づいてくる。無警戒なその歩みに違和感を覚えるけど、見た感じねーちゃんは武器を持っていない。ゆらゆらと長い袖を揺らしているだけだ。この分だとオレの小剣ほうが先に届くだろうけど、ニノの例もあるからな。リーチだけで判断するのは危ない。


「ふっ!」


 オレはねーちゃんの膝目掛け、小剣を横なぎに一閃する。

まずはかわしにくいこの一撃で、相手の出方を見たい。


「通らないヨ」


 でも繰り出したオレの小剣は、ねーちゃんのひらひらした長い袖の巻き付きに絡め取られた。そ、袖でなんて、そんな方法ありかよ!? オレは武器を持って行かれまいと、慌てて小剣をたぐり寄せる。


「少年、力比べネ」


「んぎぎぎ!」


 だけどオレの小剣は、ねーちゃんの袖にからまったまま動かない。

一瞬の拮抗のあと、天秤はあっさりとね-ちゃんに傾いた。

細い体のにしか見えないのに、どこにそんな力があるのか。

オレはねーちゃんの方に強く引きずられた勢いで、バランスを崩してしまう。


「ホイ」


 たたらを踏んだそこに、もう片方の袖がオレの顔に巻き付こうと襲いかかった。

ヤバい、これに巻き付かれたら終わりだ!


「なんのおっ!」


 まだ終われない。オレは訓練の成果を何も出せてないんだ!

オレは引っ張られる勢いを逆に利用して、ねーちゃんの懐めがけ飛び込む。


「それは悪手ヨ」


だけどそれは体をひねったねーちゃんに軽々と避けられた。けれどその動きで、オレの小剣に巻き付いていた袖がスルリとほどける。


「ぐえっ!?」


 そしてねーちゃんが避けたせいで、オレは飛び込んだ勢いそのままに、顔面から地面に激突した。


「うわ~……痛そう」


「ボウズ! 傷は浅いぞ!


 無様に顔面着地をひろうしたオレへ、観客席からも心配の声が飛ぶ。

確かに顔がメチャクチャ痛い! この分だときっと鼻血も出てるだろう。

でも……。


「……やられたネ」


 ねーちゃんの片袖は()()()()()()()()()、肩口からほつれてちぎれ落ちていた。


「エイファが避けるのも織り込み済みだったカ」


 オレをさけようとねーちゃんが体をひねった時点で、袖は巻き付く力を無くしヒラヒラと宙を舞った。それはもう変幻自在に絡めとる武器ではなく、ただの長い袖だ。ねーちゃんの横を通過した時に、中空に浮いたそれをつかんで、勢いのままオレの体ごと引っぱったんだ。さしもの袖もその重さには耐えられなかったらしい。


「へへ、どんなもんだい! おかげでダメージはオレの方が酷いけどね」


「いいぞーボウズもっとやれー!」


「ああっ、エイファちゃんの萌え袖があー!」


 むき出しになったねーちゃんの腕。

その腕には一匹の細長い龍が、絡みつくように描かれていた。

鋭い目をした黄金色の龍が。

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