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あめつちのシズク  作者: 相田リキ
少年期
11/33

11.天降ろしの儀

「はぁ~15位かー……」


 家族がむかえに来た飛龍の子と別れて、オレは家族とニノたちとお昼のご飯を食べていた。そういや飛龍の子の名前聞きそびれたな。まあ、また会った時にでも聞けばいいか。


「なによ、その代わり特別賞はもらったでしょ! あたしなんてリタイアだったんだから! う~、くやしいー!」


「ミリカはいっとーしょ~!」


 パッとしない結果のオレとニノと違い、ミリカはちゃっかり1位をとっていた。


「ミリカは凄かったな! ぶっちぎりの1位だったし、父ちゃんビックリしたぞ」


「あれは組んだ相手が凄かったのも大きいね」


 そうなのだ。母ちゃんの言う通りミリカのペアの相手は、頭だけちょこんとかわいらしいスイカの被り物した、ムッキムキの筋肉の塊のような大男だったらしい。

そのごん太の足にミリカがしがみついて、ゴールまで独走状態で勝利を飾ったという。


「……それって二人三脚でもなんでもなくね?」


「い、一応足は紐で結んでたから……」


 父ちゃんも実はおかしいと思ってたんだな……。


「特別賞のシズクさんも凄かったですよ。あの次々と切り払う姿には、私思わず拍手してしまいたから」


「コリエルちゃんと観戦してたけど、周りの観客も驚いてたよ。あの子まだ少年なのに恰好良い、ってね」


「あ~! あたしもシズクのそれ見たかったのにー!」


 オレが被り物のかけらを切り払ってた時、ニノはちょうど転倒していてそれどこ

ろでは無かったらしい。なんでもおばちゃんの羽が、開始早々引っ掛かったとか。

でも、オレも良かったのは結局そこだけだしなあ……。

そのおかげで特別賞をもらったけど、やっぱりくやしいぞ。


「ま、このくやしさは、天降ろしの儀では晴らすとするか!」


「あたしもよ、今度は優勝するんだから!」


 オレにとっての本番は、もともと天降ろしの儀だからな。

午後から開催されるこの祭りの目玉、天降ろしの儀。まあ、いわゆる武の大会だ。

武の大会と言っても、昔から行われてきた伝統的で儀式的な側面もあるから、見物がてら記念に参加だけする人たちも多い。


「あら、ミリカちゃんも?」


「うん! きねんさんか~」


 参加人数が多いため、この儀では3つの武舞台が用意されている。

その内2つは記念参加者用だ。記念参加者は記念参加者同士、小さめの武舞台に立って構えをとったら、すぐ両者共に武舞台をおりる感じ。だから回転は速い。


「シズクは記念参加じゃないんだから、怪我に気を付けなさいよ」


「気を付けるけどさ。ケガはしょうがないよ母ちゃん」


 ほかの2つよりも広くて大きい武舞台が、ガチの参加者が戦うためのものだ。

まあガチの参加者と言っても村の腕自慢レベルも多いから、本当に強い参加者はまれだ。あくまでもメインは祭りだし、観客が見て楽しむイベントみたいな扱いだ。

それでも戦う以上、ケガ人は毎年出るんだけどね。


「シズクさんもお嬢様も無理だと思ったらすぐに棄権してくださいね」


「そうだぞ、天降ろしの儀は今年だけじゃないんだからな」


「また棄権はしたくないわね。優勝よ、優勝!」


 コリエルさんによれば今年のガチ参加者は18人、そのうち子供はオレとニノぐらいだろうから16人が大人になる。だから優勝するってニノは言ってるけど、たぶん無理だと思う。でもオレにとっては、学校と素振りの成果をためすいい機会だ。


「儀式までちょっと時間があるし、今の内に見たいところがあれば行きしょうか」


「それなら父ちゃんは、見世物小屋の珍しいモンスターを……」


「ミリカはキラキラのちっちゃなおさかなつりた~い!」


 ミリカが言っているキラキラは、祭で定番の宝石魚すくいの事だ。

実際の宝石がついてるわけじゃないいけど、キラキラ淡く光っててとってもキレイな魚なんだ。


「お嬢様はいかがいたします?」


「なんでもいいわ、今はそれより精神集中よ」


「オレも」


 今度こそ情けない姿は見せられないし、訓練の成果がどこまで通用するか知りたい。それはニノも同じだろうな。


「はい、それじゃ宝石魚すくいに決定ね!」


「そんなかあさーん……」


 そうして父ちゃんの嘆きはよそに、ミリカとついでに母ちゃんが宝石魚をすくっていたら……ついに儀式の時間が来た。





 町中に天降ろしの儀の開催が宣言され、各出場者は長蛇の列を作っている。

今並んでいるのは全員が記念参加者で、オレたち正式な出場者は大武舞台の横にある待機&観戦場所で椅子に座っていた。オレはと言えば、大人に囲まれてちょっとだけ緊張してるニノの相手をしている最中だ。


「ちょっと……ほんのちょっとだけど、さすがに緊張するわね」


「そうだな」


「ちょっと緊張するわね!」


「メチャクチャ緊張してるじゃん……」


 ほんのちょっととは何だったのか。ニノはガチガチに緊張しているようだった。

他の出場者を見ておきたかったけど、仕方がないのでその背中をさすってやる。


「あ、ありがと。だって、すごく観てる人多いじゃない?」


「まあ学校は生徒だけだからなあ」


 しばらくしてニノの緊張もほぐれてきたころ、始まりの合図として透き通るような鈴の音が高らかに鳴った。


「静粛に!」


 しんと静まった会場に神官の祝詞がひびく。

一応儀式でもあるので、初めにはこういった堅苦しい感じの演出もあるんだ。


「それではこれより神に奉納する戦い、天降ろしの儀を取り行う!」


「出ませい! 奉納の天の戦士達!」


「「「わああああああああああ──────っ!!」」」


 神官の声にオレたち正式な出場者総勢18人は、円状の大武舞台の上に並び立つ。

そのままぐるっと練り歩いて観客たちに顔を見せると、観客席から各出場者へ応援の声が飛び交った。


「きゃー! シズクくーん!」


「ボウズ頑張れー!」


 もちろんオレへの応援もあった、というか他の出場者より多い気がする。

どうやらさっきのレースを見ていた観客たちがいて、ちょっとしたオレを応援するあつまりが出来てるみたいだ。

正直、照れる。


「どうすりゃいいんだこれ……」


「あっちみたいに堂々としてればいいじゃない……あら?」


 オレの後ろをまだちょっと硬い感じで歩くニノ。言われた通り、もう一方の大きい歓声がしている方を見てみることにした。


「キャー! ハッスルマッスル様ぁー! ポージングしてぇー!」


「うおー! 今度も優勝だあー! ムキムキのダンナぁー!」


「ムハハハハ! ハッソー! マッソー!」


 さっきの二人三脚でミリカと組んで1位を取ったムキムキのおっちゃんが、己の筋肉を見せつけポーズまで取っていた。筋肉の塊のような大男って父ちゃんたちも言ってたし、どう見てもアレで間違い無いだろう。


「てかなんで上半身裸なんだろ……」


「えっ!? ……えーっ!?」


 ニノもギョッとした目でムキムキのおっちゃんを見ている。

よっほど見たかったのか、目をゴシゴシしては何度も視線を向けていた。

まあすごい筋肉だからな!


「ムキムキのおっちゃんも要注意だけど、他の出場者も見てけよー」


 筋肉に気をとられているニノはさておいて。オレは歓声に手を振り返しつつ、目ぼしい出場者がいないかチェックを始める。うーん、そうだなあ……。

オレの見た感じ、他の出場者の中で目を引くのは、 ナイフをクルクル回してるおじさんと傭兵らしい細身の男の人。あとはやけに袖が長い服を着た女の人ぐらい、かな。

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