表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

森を抜けたその先へ

「シアって呼ぶね」


「ぐっ!」


そういって速攻であだ名をつけられた私は、あまりのかわいさに一瞬思考を宇宙の果てに飛ばした。

………危ない危ない。戻ってこられてよかった。


「私はシアに命を救ってもらった。何か私にしてほしいこととかない?何か恩返しがしたいの」


そういわれてもなあと、私は思う。

パッと思いつくものが……あった。

そうだ!!どうしてこの洞窟に来ることになったんだ。


「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?」


「もちろん!」


自分にできることがあるとわかると、

パァァ、と頭の上に光が出ているようだった。


「その翼、もう動かせそう?」


「大丈夫だよ」


「じゃあ、この近くに人間が住んでる集落とかある?」


「人の集落?ここから少し行ったところにあったと思うけど…?」


「じゃあ明日、そこまでお願いしてもいいかな…?」


______________


私は荷造りを始める…といってもまとめるものはこれといってないんだけど。

竜の翼を直した塗り薬と…森に生えてた薬草とか香辛料とかと、

そして…ずっとそばで支えてくれた『相棒』

こんなものかな。

荷物を持って洞窟に向かう。

そうしてこの森で眠る最後の日を終えた。


______________


私が目を覚ますとそこには竜がもう準備をしていた。


「んぅー……おはよう」


「おはよう。シア」


「先に身だしなみを整えてもいいかな?」


「もちろん」


今生活スペースにしている大きな木のうろから

這い出る。

初めの頃の探検の時に見つけていた小川のある場所まで行く。

近頃人と会う機会がなかったこともあり、身だしなみに気を使うこともなくなっていた。

岩の隙間から湧き出てくる透き通った清水に、そっと顔を写す。

髪はぼさぼさになっていて、顔にも薪の煤がついている。

綺麗な湧き水でパシャパシャと顔を洗う。

顔を洗った流れでそのまま髪を触る。

その時、何故かパチっと小さな静電気が起きた。

たいして痛くない、本当に小さなものだったので気にせず続ける。

本当はちゃんとした櫛などでしっかりと梳きたいのだが、こんな森の奥でそんな嗜好品を作る余裕もなく、仕方なく手櫛で梳く。

最初に比べれば多少マシになっただろうか。

最終確認を済ませた私は待ってくれている竜の元に行く。

昨晩まとめておいた荷物を背負う。


「おまたせ。じゃあお願いしてもいいかな」


竜の背に、乗る。

初めての経験に少しだけワクワクしている自分がいた。


「えっと…じゃあ乗るね」


竜は私が乗りやすいように屈んでくれた。

足を乗せようとした時、ハッと気がついた。

土足のままだと毛が汚れてしまう!!

いそいそと靴を脱いだ。


二度目の正直、

脱いだ靴を片手に裸足になった私は、竜のふわふわな背中に左足を置く。


その刹那、強烈な感触が足を、そして頭を襲う。

人生で一度も感じたことのない柔らかくてふわふわな感覚だった。

私が見つけるまで何日もあんな所にいたのにそのつやを失っていない毛に戦慄した。

本人が自覚している以上に育ちがいいのだろうか。


その感触に浸り、よろけそうになるのを堪える。

乗馬の経験もないのにうまく乗れるか不安だったが、意思疎通ができることもあるのだろう。

案外簡単になることができた。

なんだろう……ふわふわ過ぎて乗っているという感覚がない。


「それじゃあ、立つよ」


「う、うん」


竜は私を気遣って優しく立ってくれた。

でもやっぱり……高い。

分かってはいたけど少し怖いな。

今まで座っている?ところしか見なかったからわからなかったが、想像を遥かに超える巨大だった。

周りの木のてっぺんを見ることができるぐらいには高い。


「大丈夫そう?」


「なんとか…」


「飛ぶよ」


「…うん」


その瞬間、轟音がなったと思ったらとてつもない風圧で周りの木々がミシミシと悲鳴を上げ始めた。

そして、ものすごい勢いで地面が遠ざかってゆく。

もう怖くて気が気じゃない。

私は咄嗟に瞼を閉じていた。


「もう大丈夫だよ」


竜にそう言われて、私は恐る恐るその瞼を開いた。



「………………………っ!!」



それは、

今まで見たこともないような、

この世界にこれ以上の景色は存在しないと言い切れるような、

そんな景色だった。

黄金色に輝く朝日は、感傷に浸っている私の体を優しく包み込む。

手を伸ばせば届きそうなほど近づいた空は、青々と輝いている。

根元にいた頃、見上げてもその先が霞んで見えなかった大樹も、いとも簡単に見下ろしている。

この景色を見れただけで、今までの苦労を無かったことにできる。


「えっと…そろそろ向かうよ?」


「…」


「おーい…どうしたの?」


「…何でもない」


不思議がっている竜を下に、私たちは人間のいる場所まで飛んでいく。

空を切って飛ぶ竜は、私が全力で走った時の何十倍もの速度で向かっていく。

これでもまだ早さに特化した種族ではないというのだから恐ろしい。


「そろそろ見えてくると思う」


「分かった」


「とりあえず少し離れたところに降りるね」


そう言って竜は村の郊外に降りた。


「そういえば…私、どうやって村に入ればいいの?」


「あっ」


失念していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ