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幸か不幸か

「えと…あ~こんにちは?」


小さな竜は私のことを鋭い目つきで睨みつけてきた。まだ幼体なのにとてつもない殺気を放つそれから私は目が離せなかった。

いつ来るのかと怯えていたのも束の間、小さき竜はそっぽを向いた。


「?????」


私はなぜ見逃されたのか全く見当がつかなかった。

私など襲う価値もないのかなど、さまざまな思考を巡らせていくうちに一つのものが目に飛び込んだ。

怪我をしている。

前話でべた褒めした翼に大きな風穴があいていた。

流血は止まっているようだがこのけがの大きさからすると傷口がふさがるまでに大量の血が流れていたのだろう。

私に攻撃を仕掛けなかったのも,無駄な体力を使いたくなかったと考えれば合点がいく。

竜の生態についての本は昔読んだ気がする。

そこには竜の幼体は人間と同じようにある程度育つまでは親の元にいると聞いたのだが……

はぐれ竜だろうか。

何にせよ、この幼竜をうまく利用することができれば……..

そう思ったら行動は早かった。


昔、誰かに教えてもらった気がする。

塗り薬(エリクサー)の作り方だ。

材料には特殊なものがいくつかあるのだが、幸い人の手についていないこの森には豊富に生えている。


材料は確か……


そうして制作を始めて数時間後、材料はあと一つといったところまで来ていた。

そして、その一つが一番の関門だった。

ひとえに竜と言っても色々な種類がいる。

火、水、地、風、etc…

そして、竜の種類によっては傷の状態を悪化させるものもあるのだ。

こればかりは賭けだがやってみるしかない。

そうして私は再び洞窟へと足先を向けた。

…..


「お邪魔しまーす……」


慎重に、音を立てないように足をつける。

相変わらず寂しい洞窟だ。

そして竜はいまだに同じ場所にいる。

今日は差し入れのボアの肉を持ってきた。

うろ覚えの即席罠だったから心配だったが、無事にかかってくれて良かった。

小さいものが二匹取れたので、血抜きしたものとそうでないものを用意している。

竜の好みなんて知らないし。

そっと口元に投げ入れる。

ゆっくりと食べ始めた。

最初は血抜きをしたものを食べていたが,大量の出血のせいだろう。

未処理のものを齧り始めた。

はじめは私のことを少しは気にしていたようだが敵意がないことがわかると気にしていなかった。

そのことを確認すると私はそそくさと鱗を数枚回収して逃げていった。

回収する途中で思いっきり目があった時は冷や汗ダラダラだった。

私は拠点にしている大樹周辺に鱗を持って帰ると最後の工程を始めた。

回収した鱗を砕いて粉末状になったものを混ぜる。

本来竜の鱗は魔法,物理耐性共に優れているのでこんなところで砕くことのできる代物ではないのだが,どうやら幼体の鱗はまだまだ柔らかいらしい。

そうして完成したこの薬の名前は...

何だったかな,思い出そうとすると…頭の中にもやがかかった感じがしてどうしても思い出せない。

まあ今はそんなことは後回しだ。

そうして私は完成した薬を持って洞窟に向かった。


いつものように竜のところまで行くと、竜は自分の翼を見ていた。

いつもならさっさとお暇するとこだが、

今回は違う。翼を治しにきたのだ。

竜は私のことを見つめている。

私も竜のことを見つめる。

いつもと違うことを察したのか竜は体を起こしてこちらへと向けた。

その神秘的な姿を完全な状態にするため、私は竜に近づいて行った。

近づいてきた私を牽制するように唸っている。

もとより私も簡単に行くとは思っていない。

そうして私は知性のある動物に対して一番手っ取り早く自分を信用させることにした。


腰に刺していた黒曜石の粗雑なナイフを取り出して、自分の腕に押し当てる。

さすがは黒曜石の切れ味。

押し当てた部分から血が流れている。

私はそのまままっすぐナイフで腕に傷をつける。


「っっつ…!」


痛い痛い痛い痛い

こんな大きな生傷を自分で作ったのは人生で最初で最後になるだろう…なってくれ。

竜は不思議そうな目で私の奇行を見ている。

そして私はペースト状になったそれを懐から取り出し、腕に塗った。

驚くべきことに傷はたちまち再生していき、あっという間に新しい皮膚が顔を出していた。

何とも言えない奇妙な感覚を脳に必死に伝えている腕を竜に見せつける。

そして、私は薬片手に竜の翼に近づいていく。

竜は私の意図を察したのか、大人しく私に翼の怪我をした部分を差し出してきた。

近くで見ると親指から小指までの大きさの風穴が開いている。

一体何をしたら……

とにかく今は治療が優先だ。

ゆっくりと触れる


「触るよ」


一言言ってから私はそっと翼に手を置く。

毛が生えていてもふもふしている。

正直この上で寝たい。

っといかんいかん、気が散ってしまった。

仕切り直して右手に掬った薬を傷口に塗る。

ここからは時間勝負だ。

最悪再生しかけた肉が行き場を失って暴走、そのまま命を落とすこともあるので大急ぎで傷全体に薬を塗る。

人差し指と中指で薬を傷全体に広げる。

今まで味わったことのない感覚を突きつけられているのに少しも動じない竜には心から尊敬する。

......


「...........おわっ…たぁ」


われながらとんでもない集中力で傷の治療が終わった。

地面に体を預けて寝そべる。

重い頭を上げて竜のほうを見る。

よかった,傷の再生が始まっている。

これで一件落着

......と行きたいところなのだが,

どうやら何か申したいことがあるらしい。



「どうして助けた。貴様に私を助ける意味があるようには思えない」

「話せるんなら最初からそうしてくれ....」

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